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トラックの燃料タンクの基礎知識、構造と交換時の注意点

2025年2月10日

トラックの燃料タンクは、一見するとシンプルな容器ですが、安全に走行するためのさまざまな工夫が施されています。そのため、燃料タンクを交換する際は、正しい部品を選定し、適切に取り付けないと不具合が発生することがあります。

こちらでは、燃料タンクの基本的な構造だけでなく、交換時の注意点ついて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。


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トラックの燃料タンクの構造

トラックの燃料タンクは、主に以下の部品で構成されています。

  • ・タンク:燃料を入れるための主部品
  • ・ステー:タンクをシャーシに固定する部品
  • ・バンド:タンクをステーに固定する部品

タンクは直接トラックのシャーシに固定されているのではなく、シャーシに取り付けられたステーを介してバンドによって固定されています。シャーシの振動やねじれで燃料タンクが破損しないように、このような構造になっているわけです。

燃料タンクの品番によっては、保護板が取り付けられていることもあります。保護板は悪路など振動の強い道を通る車両の燃料タンクを保護するために、タンクの下に装着される部品です。

なお、燃料タンクの中には、燃料の残量を計測するためのユニットゲージが取り付けられています。
トラックの燃料タンクの構造 ユニットゲージ
ユニットゲージは、フロートと呼ばれる燃料に浮かぶ部品を備えており、燃料の増減と共にフロートの位置が変化することで、メーターの燃料計に残量を表示します。

ユニットゲージの選定は非常に重要です。適合しないユニットゲージを取り付けてしまうと、実際の燃料の残量とメーターに表示されている残量にずれが生じ、ガス欠になるなどのトラブルにつながりかねません。

詳しくは以下のページで解説しています。興味のある方は、ぜひこちらもご覧ください。

>燃料タンクのユニットゲージとは?役割・選定方法・取付時の注意点

燃料タンクを製造しているメーカー

トラックの燃料タンクは、以下のようなメーカーが製造を行っています。

  • ・YSタンク
  • ・東京ラヂエーター製造
  • ・ガッポタンク(宝栄工業)
  • ・大丸鐵興
  • ・日軽フューエルタンク(日軽金アクト)

以前は末吉工業というメーカーもありましたが、製造から撤退しており、現在は入手できません。

燃料タンクはメーカーによって大きさや材質、形状がそれぞれ異なります。各メーカーが製造しているタンクやステー、バンドの材質は以下の表のとおりです。
燃料タンクを製造しているメーカー

燃料タンク交換時のポイント

燃料タンクは、経年劣化や損傷などで交換が必要になることがあります。交換時は必ず正しい品番のものを用意しなければいけないため、手配する際は慎重な選定が必要です。

ここからは燃料タンクを選定するための、具体的な方法を解説していきます。

タンクに貼ってあるシールを確認する

燃料タンクには必ず、タンクの情報が書かれたシールが貼ってあります。シールにはメーカー名や品番が記載されているため、その情報をもとに新しいタンクを選定することが可能です。

しかし、中には雨風にさらされてシールが剥がれていたり、タンクがシールごと塗装されていたりして、記載内容を確認できない場合があります。この場合は、タンク寸法(高さ、奥行き、長さ)とステー間隔を確認することで、メーカー名や品番を予測できます。

その際にポイントとなるのが、寸法だけでなく、必ずステー間隔も確認することです。寸法だけで予測すると、別のメーカーでも似たようなタンクが存在する可能性があるため、予測を誤ってしまうことがあります。

メーカーによってステー間隔が異なるケースがあるので、ステー間隔も確認することで予測の精度を上げられます。

汎用タンクに交換できる車種か確認する

汎用タンクに交換できる車種

燃料タンクを交換する際は、費用を抑えるために、比較的安価な汎用品(汎用タンク)を取り付けることも少なくありません。

しかし、近年では純正タンクしか取り付けられない車種が存在します。そのため、「日野大型新型対応」など、専用のタンクを販売しているメーカー(大丸鐵興)もあります。

車種によっては、条件付きで汎用タンクに交換可能な場合もありますが、燃料タンクはトラックを動かすための重要部品であるため、慎重な部品選定が必要です。

UN-R34対応品に交換する際のポイント

2018年9月1日以降の新型車には、車両火災防止協定規則により、燃料漏れ防止基準「UN-R34(以下、R34対応品)」という新基準の燃料タンクが取り付けられています。

現在では、旧基準の燃料タンクが入手不可か受注生産となっているため、旧基準のものを使っているトラックの燃料タンクを交換する際に、R34対応品を取り付けることがあります。

ここからは、その場合に気を付けるべきポイントを解説していきます。

なお、燃料漏れ防止基準「UN-R34(以下、R34対応品)」については以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はぜひこちらもご覧ください。

>トラックの燃料タンクとは?役割や内部構造について解説

ステー間隔を確認のうえ、適切な位置に取り付ける

ステー間隔

YSタンクのみ、旧基準の燃料タンクと後継品であるR34対応品のステー位置が異なる場合があります。そのため、旧基準の燃料タンクが取り付けられているトラックに、後継品のR34対応品はそのまま付けられません。

YSタンクでは、新旧のタンクでステー位置が異なる品番があるため、該当する場合は、車両のステー位置をR34対応品に合うようにずらしてから取り付ける必要があります。

燃料タンクのステーが当たる位置は、タンク内側を補強しているため、ステーは必ず指定の位置に取り付ける必要があります。ステーの位置がずれていると、タンクが破損する原因になりがちです。

燃料タンクにはステー位置を示す刻印があり、どこにステーを当てればよいか、目視で分かるようになっています。

燃料タンクキャップは同じメーカーの同じ基準品に取り替える

給油時にタンクキャップを紛失した際など、燃料タンクキャップを新しいものに交換する場合も、注意すべきポイントがあります。

タンクキャップは必ず同じメーカー品かつ、同じ基準品(旧基準またはR34対応品)を使用してください。タンクキャップは燃料タンクに合わせて専用に設計されているため、誤ったものを取り付けるとタンクが潰れたり、燃料が漏れたりする可能性があります。

例えば、旧基準の燃料タンクは燃料が減った分の空気をタンクキャップから供給する構造になっているので、タンクキャップには空気が通るための隙間が空いています。一方で、R34対応品は燃料漏れ防止のため密閉式になっているのが通常です。

したがって、旧基準の燃料タンクにR34対応品のタンクキャップを付けてしまうと、タンク内部に空気が供給されず、燃料が減った際にタンクが潰れてしまうのです。

新しいタンクキャップが必要な場合は、タンクに貼ってあるシールや注入口径を確認し、適切なものを用意する必要があります。

燃料タンクが旧基準品か、R34対応品か分からない場合は、いくつかのポイントを確認することで判断できる場合があります。R34対応品の燃料タンクの特徴は、以下のとおりです。

  • ・フィラー(給油管)内部にフラップがある
  • ・タンク側面にレベルゲージ(油面の位置を確認するためのホース)がない
  • ・R34認可番号がある(シール表示、フィラー外周へのレーザー刻印など)

また、タンクキャップには「キー付き」と「キー無し」があるため、必要に応じてキーの有無を選択します。

燃料タンクが給油口ノズルに干渉しないか確認する

YSタンクの燃料タンクでは、旧基準と同じ位置にR34対応品を取り付けると給油できない場合があります。R34対応品には、給油口内に燃料が漏れないようにフラップという弁が取り付けられているからです。

フラップがあることで、給油ノズルの挿入角度が制限されてしまいます。そのため、R34対応品では、給油ノズルを挿入する際に旧基準品と比べて20mmほど高さが必要になることがあり、上物架装等の状態によっては給油ノズルが干渉してしまいます。

燃料タンク上部の近い位置に干渉しそうなものがないか確認し、場合によっては取り付け位置を下げるなど、設置に問題が起こらないようにしなければいけません。

まとめ

トラックの燃料タンクはタンク、ステー、バンド、ユニットゲージなどの部品から構成されています。トラックの燃料タンクを交換する際は多くの注意点があり、タンクの大きさやステー位置はもちろん、R34対応品かどうかも確認することが必要です。

ヤマダボディーワークスでは、燃料タンク本体及びステー・バンド・ユニットゲージは、自社で燃料タンクの取り付けや構造変更申請が可能な車検整備工場様や架装工場様など専門の業者様のみに販売しております。
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