トラックの観音扉の制作プロセス|構造と必要な部材の選定方法
2024年8月19日
観音扉は、バンやウイングの後方に使われてる扉です。観音扉は機能性が高く、耐久性も兼ね備えているため、多くのトラックに採用されています。
この記事では、芯材にベニヤ板を使用した観音扉の構造や制作プロセスや、使用されている主要な部材、それらの部材の選定方法を解説します。ツーピースガスケットのような選定が難しい部材を選ぶ際のポイントについても見ていきましょう。
【この記事で分かること】
- ・観音扉がどのように制作されているのか
- ・接着型と軟質型のHゴムの違い
- ・観音扉に必要な部材の選定方法
目次
観音扉の制作プロセス
接着型のツーピースガスケット※(Hゴム)を使用した観音扉は、以下の流れで制作されています。
※ツーピースガスケット…ドアの縁に取り付ける、H型をした塩ビの部材。ドア材側の塩ビが硬質、門口側の塩ビが軟質の異なる2つの素材(ツーピース)で構成されている。
- 防水処理のためにドア材に防水テープを巻く
- ツーピースガスケットのドア材に接着する側の溝にコーキング剤を塗布する
- ツーピースガスケットをドア材に適した長さに切断して、横の辺と接する部分の両端を45度にカットする
- ツーピースガスケットを取り付ける
- 取り付けたツーピースガスケットの内側(ドア材側)縁をアルコールなどで脱脂し、マスキングテープを貼る(ドア材の表裏行う)
- ツーピースガスケットとドア材の縁に、縁から水が浸入しないようにコーキング剤を塗布する(ドア材の表裏行う)
- 扉の表裏の横の辺と接する部分の四隅にコーナータブを適切な長さに切断してから、塩ビ用接着剤で貼り付ける(塩ビ同士を接着する際は塩ビ用接着剤が必要)
- コーナーロックを扉の角に塩ビ用接着剤で貼り付けビスで固定、ビスの穴から水が侵入しないようにコーキング剤を塗布する
- マスキングテープをはがし、一晩置いたら完成
コーキング剤は、ホームセンターなどで販売されている変性シリコーン系コーキング剤を使用してください。また、ドア材の表面に貼られている保護用のビニールは、一般的にトラックに設置してからはがします。
Hゴムには接着型の他に、軟質型があります。軟質型のHゴムを使った観音扉については、後ほど解説します。
手順の詳細:ツーピースガスケット(Hゴム)の合わせ方
観音扉は、閉めた時に2枚の扉同士が重なり合う辺が1辺存在します。観音扉の合わせ目のツーピースガスケットは、先開きのドアのツバを長い方を外側にし、後開きのドアはひっくり返してツバの長い方が内側になるように取り付けます。
上記の方法で取り付けると、観音扉を閉めたときにお互いのドアの短いツバが干渉してしまいます。短いツバは片方だけあれば良いので、後開きの短いツバをカッターなどでカットしてください。
残りの扉同士が重ならない6辺(ドア1枚でみると3辺)のツーピースガスケットは、長いツバが外側になるように取り付けます。
なお、「最初からツバがカットされたツーピースガスケットがほしい」との問い合わせをいただくことがありますが、ヤマダボディーワークスではそのような商品を扱っておらず、ご自身でカットをお願いしています。
観音扉の制作に必要な部材
観音扉の制作には、以下のような部材を用います。
- ・ツーピースガスケット
- ・防水テープ
- ・コーキング剤
- ・コーナーロック
- ・コーナータブ
- ・塩ビ用接着剤
以下では、それぞれの部材の選定方法をご紹介します。なお、ツーピースガスケットを選定する際は、観音扉のサイズに関する知識が必要となるため、合わせて解説します。
ツーピースガスケット(Hゴム)
ツーピースガスケットを選定するためには、観音扉のサイズを把握する必要があります。ベニヤ芯材の大きさは以下の3種類がありますが、4×8尺もしくは4×9尺が使われていることが一般的です。
- ・3×6尺(920×1,830mm)
- ・4×8尺(1,230×2,440mm)
- ・4×9尺(1,230×2,750mm)
また、観音扉によって厚みが異なるため、ツーピースガスケットの幅も扉の厚みに合わせましょう。ドアの厚みは芯材の厚みによって決定し、12mm、15mm、18mmの種類が芯材が存在します。
芯材とはドアの内部に入っている材料のことで、芯材をアルミ板などで挟み込むことでドア材を構成しています。芯材の厚みに1mm(アルミ板などの厚み)足したサイズがドア材全体の厚み(Hゴムの幅)となります。芯材が12mmであればHゴムは13mm、芯材が15mmであればHゴムは16mm、芯材が18mmであればHゴムは19mmのサイズを選択してください。
2枚分の扉を構成するために必要となるツーピースガスケット(Hゴム)の本数は、以下のとおりです。
- ・4×8尺:L=2,500mmを6本
- ・4×9尺:L=3,000mmを4本、L=2,500mmを2本
4×8尺の場合は縦(長い辺)が2,440mmしかないため、L=2,500mmのHゴムで十分です。しかし、4×9尺は縦が2,750mmあるため、L=3,000mmが4本必要となります。4×9尺の観音扉が大型車の低床車に使われるサイズであり、強度が求められるため、芯材の厚みは18mmとなっています。
以下は当社扱いの「Hゴム 接着型」のラインナップです。
防水テープ
防水テープは、最初の工程でドア材の周囲に巻くテープです。
ヤマダボディーワークスでは幅30mm、長さ50mの観音扉用防水テープを取り扱っています。長さが50mあるので、4×9尺の観音扉でも1巻で1台分(ドア2枚)をまかなえます。
コーナータブ・コーナーロック
コーナータブとは、観音扉の両面のツーピースガスケットの合わせ部分を塞ぐ部材です。
コーナータブを貼り付ける際には塩ビ用接着剤を使用します。観音扉1枚には4つの角があり、両面にコーナータブを貼るので、8個必要です。そのため観音扉2枚を仕上げるためには、コーナータブを16個使用します。
コーナーロックは、制作プロセスの最後に観音扉の角に貼り付ける部材です。塩ビ用接着剤で貼り付け、ビスで固定します。観音扉1枚には4つの角があるため、2枚の観音扉を仕上げるためにはコーナーロックを8個使用します。
塩ビ用接着剤
塩ビ用接着剤は、コーナータブやコーナーロックをツーピースガスケットに貼り付ける際に使用します。
ヤマダボディーワークスでは、スリーボンド パンドー156A(塩ビ専用接着)を取り扱っています。コーナータブやコーナーロックの接着にはこの専用接着剤を使用してください。
コーキング剤
コーキング剤は観音扉に防水性を持たせるために防水テープの周囲や、ツーピースガスケットの縁に塗布するための部材です。
コーキング剤には、シリコーン系コーキング剤と変性シリコーン系コーキング剤という種類があります。シリコーン系コーキング剤は塗装がのらないため、変性シリコーン系コーキング剤を使用してください。
ヤマダボディーワークスではコーキング剤の取り扱いはありませんが、ホームセンターなどで購入できます。
軟質型のHゴムを使用する場合の制作手順
軟質型のHゴムは、接着型と比べると全体が柔らかい素材でできています。軟質型で観音扉を制作すると、Hゴムの縁の部分のめくれやホッチキスの穴からの浸水などにより防水性を損なうので、長期的に見るとベニヤ芯材まで浸水しやすいというデメリットがあります。
軟質型を取り付ける際は、アルミリテーナーをドア材とHゴムの間に入れてガンタッカーなどの強力なホッチキスで打ち込んで固定しましょう。アルミリテーナーとは、0.8mm程度のアルミ板を細長く切ったものです。軟質であるため、Hゴムのドア材と接する部分をめくってコーキングを塗布します。さらに、ツーピースガスケットと同様に、マスキングをしてからHゴムの縁にコーキングを塗布します。Hゴムの合わせ目をハンダゴテで溶着して完成です。
なお、以前の観音扉には軟質型を使用していましたが、現在はメーカーが生産を中止しています。ヤマダボディーワークスでも軟質型のHゴムは取り扱っていません。
まとめ
現在のトラックの観音扉は、接着型のツーピースガスケットを使用したものが主流です。接着型の観音扉は、内部に水が侵入しないように防水処理を行いながら制作しているため、高い耐久性を兼ね備えています。
観音扉に使われている部材はツーピースガスケット、防水テープ、コーキング剤、コーナーロック、コーナータブ、塩ビ用接着剤です。ツーピースガスケットは観音扉のサイズによって、適切なものを選定する必要があります。
ヤマダボディーワークスでは、観音用部材を取り扱っています。コーキング剤と軟質型のHゴムの取り扱いはありませんが、それ以外は多くの種類がありますので、ぜひご活用ください。