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ガススプリングとは?構造や仕組み・使用時の注意点を紹介

2023年3月20日

ガススプリングは、トラックの跳ね上げ式扉の開閉補助に使われる装置です。作業効率や安全性を確保する上で欠かせない装置となります。

ガススプリングは消耗品です。繰り返し使用することで劣化するため、跳ね上げ式扉が重くなったり勝手に落ちてきたりするようになった場合は交換が必要です。

今回は、ガススプリングの構造や仕組みの詳細と、使用するメリット・使用時の注意点など、詳しく解説します。

ガススプリングとは?

ガススプリングとは?

ガススプリングとは、気体の力を利用したバネのことです。物体を跳ね上げる動きが得意なため、自動車のバックドアや椅子の高さ調整など多くの場所で使われています。トラックでは主に、跳ね上げ式扉に使われています。

ガススプリングの用途と使い方

ガススプリングは主にリヤ・サイドの跳ね上げ式扉の開閉補助に使用されています。

跳ね上げ式扉というのは、乗用車のハッチバックに付いているような上開きのドアのことです。多くはリヤドアに採用されていますが、移動販売車やキッチンカーなど、荷台のサイドドアが跳ね上げ式になっているトラックも増えています。

跳ね上げ式扉にガススプリングを装着すると、ドアを開ける時(持ち上げる時)は小さい力で開けられるようになり、全開位置で支え続ける必要もなくなります。

また、扉を閉める時はガススプリングの反力が、扉が勢いよく閉まることを防ぎます。

このようにガススプリングには、「ドアを開ける時に持ち上げる力を補助する」「ドアを全開位置で保持する」「ドアを閉める時に適度な抵抗を作る」といった役割があります。

ガススプリングの内部構造

ガススプリングの内部構造
画像引用:ガススプリング(フリーピストンタイプ) KMFシリーズ | カヤバ(株) | MEKASYS(メカシス)(https://www.mekasys.jp/series/detail/id/KYA_0017/)

ガススプリングは注射器のような構造をしており、主な構成部品は「チューブ」「ピストン」「ピストンロッド」です。外筒であるチューブにピストンロッドがささるような形で構成されており、ピストンロッドの先端にピストンが付いています。

チューブの内部には「窒素ガス」と「オイル」が封入されており、ガスやオイルが漏れないように、チューブの端部には「ロッドガイド」と「シール」が組み付けられています。ピストンにはオリフィス(孔)が空いており、ガスとオイルがピストンの上下2つの空間を行き来するため、ピストンはチューブ内を動くようになっています。

ガススプリングの仕組み

ガススプリングはピストンが上下に動くようになっており、ピストンロッドを押し込むと縮んでいきます。ガススプリング内の窒素ガスは漏れないように密閉されているため、ピストンの位置に関わらずガス量は一定です。

ガススプリングを縮めていくと内部のガスが入っている空間が小さくなっていきます。そのため、圧縮されてガス圧が高まります。高まった圧力は、ピストンを押し戻そうとガススプリングが伸びる方向に動きます。注射器の先端を閉じながらピストンを押していくと、反力が返ってくるのと同じ仕組みです。

ドアが閉まっている時は、ガススプリングが縮んでガスが圧縮されています。ドアを開けるとガススプリングがガス圧で伸びるため、リヤドアを跳ね上げる方向に押します。全開になるとガススプリングがリヤドアを支えるため、勝手に下がってこないのです。

また、チェックバルブという機構があるガススプリングがあります。これは、チューブ内のオイルの移動速度を制御する仕組みです。ピストンロッドの伸び側に設置され、ガススプリングがゆっくりと伸びるようになるため、扉もゆっくりと開くようになります。チェックバルブが備わっていなければ扉が勢いよく開いてしまい、扉の外側にいる人がケガをしたり関連部品の劣化を早めたりする可能性もあるため、跳ね上げ式扉には、一般的にチェックバルブ付きのものが使用されています。

ガススプリングを使うメリット

ガススプリングは、金属製のバネと比べてコンパクトで強い力を出せるのが特徴です。さらに圧縮比が小さいので、ストロークの力の変化が少ないというメリットがあります。

圧縮比とは、バネを少しだけ縮めた時に必要な力と最大まで縮めた時に必要な力の比のことです。この2つの力の差が大きいと圧縮比が大きくなり、力の差が小さいと圧縮比が小さくなります。

跳ね上げ式扉に圧縮比が大きいバネを使うと、ドアの開閉操作が難しくなります。バネの縮み具合によって反力の差が大きくなるため、最大まで縮めている時は反力が大きくなり、伸びていくにつれて反力が弱くなっていきます。つまり、ドアを開けた瞬間は強い力でドアを跳ね上げますが、ドアが開いていくにつれて力が弱くなっていくということです。

ドアを閉める時は全閉付近で反力が強まるため、強い力で押さないとドアを閉められなくなってしまいます。圧縮比が小さいガススプリングを使うことでドアの開閉位置に関わらず反力が一定になるため、安定した開閉操作ができるようになります。

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ガススプリング選定時・使用時の注意点

ガススプリングを使用する時の注意点を3点ご紹介します。注意点を守らないと、ガススプリングの寿命を縮めたり安全に使用できなくなったりする可能性があります。

ロッドに傷や汚れが付かないようにする

ピストンロッドに傷や汚れが付くと摩耗が増大するため、劣化を早めてしまいます。またシールに傷がつくと、ガスを密閉できずに漏れてしまう可能性もあります。ピストンロッドに鋭利なものが当たらないように注意し、汚れている場合は速やかに清掃を行いましょう。

また、ガススプリングに横向きの力を加えると、片側だけ摩耗が進み劣化を早めてしまいます

寿命があるので定期的な交換が必要

ガススプリングは、適切に使用しても繰り返し使用することで劣化します。使用中のメンテナンスは必要ありませんが、ガスの再封入などの修理もできないため劣化したら交換が必要です。

ガススプリングは、10,000〜100,000ストロークが交換の目安です(使用環境によって変化)。劣化したガススプリングは反力が弱まるため、使用を続けるとリヤドアが支えられずに落ちてきてしまうこともあります。ドアは重量があるため、突然落ちてくると危険です。ガススプリングに劣化の兆候が見られる場合は、速やかに交換しましょう。

そのほか選定時の注意点

ピストンロッド取り付け部とロッドガイドの間は、10mmほどゆとりを持たせる必要があります。取り付け状態で長さの確認が必要です。ガススプリングには最大長と最小長があるため、ドアにガススプリングを固定する位置を確認し、ドアを開けた状態と閉めた状態で適切な長さになるか測定してください。

また、トラックに使用する場合はチェックバルブ付きのタイプのものを選びましょう。チェックバルブはガススプリングが伸びる時のスピードをゆっくりにし、扉が急速に跳ね上がるのを防ぎます。使用時の安全性に関わる重要な機能であるため、チェックバルブの有無を確認しましょう。

ガススプリングについてのよくある疑問

ガススプリングの取り付け時や使用時に、よくある疑問点を4点ご紹介します。

ガスダンパーとの違いは?

ガススプリングとガスダンパーは見た目や名前が似ていますが、役割が異なります。物体を持ち上げたり保持したりするガススプリングに対し、ガスダンパーは物体の振動や運動を抑えるために使われます。ガススプリングの役割はエネルギー蓄積装置、ダンパーの役割はエネルギー吸収装置です。

ガスダンパーの内部構造もガススプリングのようにピストンが付いており、チューブ内を2つの空間に分けています。チューブ内にはオイルが充填され、ピストンがチューブ内を移動する際に抵抗が生まれます。この抵抗はピストンの動きの反対方向にかかるため、緩衝力が発生するのです。

自動車の足回りに使われているショックアブソーバーがガスダンパー(緩衝装置)の使用例として挙げられます。自動車の走行中に段差を踏んだ時、足回りのスプリングが吸収した振動によって車体が余計に揺れないように、ショックアブソーバー内の抵抗で揺れを吸収しています。

ガススプリングの取り付け方法は?

ガススプリングの取り付け方法は、ガススプリングの両端をそれぞれボディーとドアにボルトで固定するだけです。

ただし、ガススプリングの上下の向きに注意が必要です。ドアを閉めた時に、チューブが上向きでピストンロッドが下向きになるように取り付けます。ピストンロッドを上向きにすると、シール部がオイルで潤滑されづらくなるため、寿命が短くなる可能性があります。また、保管の際も同様にチューブが上向きで、ピストンロッドが下向きになるようにしましょう。

ガスが抜けてしまう原因は?

適切に使用してもストロークの繰り返しによって、微量ではありますがガスやオイルがシール部分から漏れてしまいます。

また、ピストンロッドを傷つけたり曲げたりしてしまうと、シールとの密着を保てなくなるためガスやオイルが漏れてしまう原因となります。新しいガススプリングでも使えなくなってしまう可能性があるため、ピストンロッドに傷を付けないようにしましょう。

ガススプリングの種類と選び方

ガススプリングを選ぶ際は、全長や反力が跳ね上げ式扉に合うものを選択する必要があります。新規に取り付ける場合は条件をもとに算出する必要がありますが、交換の場合は以前と同じものを使用すれば問題ありません。

ただし、トラック業界で主流だった「トキコガススプリング」は、2019年8月で生産が終了となりました。トキコガススプリングが劣化しても同じ部品を発注できない状況になっていますが、「カヤバ」「HANIL PRECISION」のガススプリングと互換性があります。

互換品を調べる方法は、トキコガススプリングのチューブ(黒い筒状の部分)の先端に記載されているストックナンバーを使います。ストックナンバーはYから始まる「Y〇〇〇〇」といった、4桁のコードのことです。ストックナンバーをヤマダボディーワークスのサイトで検索すると、互換品が簡単に検索できるため、ぜひご活用ください。

ヤマダボディーワークスのサイト
>ヤマダボディーワークス ガススプリング/ガスダンパー

交換用ガススプリングはヤマダボディーワークスへ

ガススプリングは消耗品のため、定期的な交換が必要です。劣化したガススプリングを使用すると、ドアが勝手に閉まってしまうこともあり危険です。ドアを持ち上げる力が弱くなったり支えられなくなったりした場合は、速やかに交換しましょう。

ヤマダボディーワークスでは、長さや反力の異なる多くの種類のカヤバガススプリングを取り扱っています。トキコガススプリングと互換性のあるストックナンバーも簡単に調べられるため、ぜひご利用ください。

ただし、ヤマダボディーワークスで行っているのは、交換用途での販売です。新規の取り付け時の機種選定や適応機種提案はできませんのでご了承ください。
>ヤマダボディーワークス ガススプリング/ガスダンパー一覧