アームロールとは?基本的な操作方法や注意点、代表的なメーカーを紹介

2024年12月3日

トラックには「アームロール」という、荷台のコンテナを脱着できる車両があります。通常のトラックと違い、荷物を積載するコンテナごと荷台から外すことができるため、荷役作業を短時間で終わらせることができます。

この記事ではアームロールの基本的な操作方法や使用時の注意点を解説し、アームロールに関するよくある疑問についてもお答えしていきます。


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アームロールとは?

アームロール

画像引用:準中型免許対応3.5t車級アームロール _ 新明和工業株式会社

アームロールとは、荷台のコンテナを脱着できる装置を備えたトラックのことです。正式名称は「脱着ボディーシステム車」や「脱着装置付きコンテナ専用車」といいます。荷台部分にフックを備えたアームがあり、荷台の外にあるコンテナを引っ張り上げて荷台に積んだり、荷台に積まれているコンテナを下ろしたりできます。

平ボディーなどの通常のトラックは、荷台が車両と一体になっているため、停車したトラックの荷台に荷物を積み込む作業が必要です。一方、アームロールはコンテナごと荷物を積み下ろしできるため、車両の停車時間が短く済みます。

また、通常は荷役作業にクレーンやリフトなど他の設備が必要になりますが、アームロールであれば1台ですべての作業工程が完結します。コンテナを積み下ろしする場所も自由に決められるため、作業効率の向上に役立つでしょう。

アームロールの主な用途・活躍の場

アームロールは荷物をコンテナごと積み下ろしできるという特徴から、以下のような短時間で荷物の回収・運搬をくり返す現場で活躍します。

  • ・産業廃棄物やごみの収集運搬
  • ・砂利や土砂の運搬
  • ・建築資材の運搬
  • ・液体物の運搬
  • ・農産物の運搬
  • ・家畜の飼料や糞尿の運搬

回収する荷物をあらかじめコンテナに入れておくと、アームロールでコンテナごと積み込むことができるため、短時間で回収が完了します。荷下ろしの際もコンテナごと取り外せるので、車両をすぐに次の現場へ移動させることが可能です。

フックロールとの違い

アームロールのような脱着ボディーシステム車は「フックロール」とも呼ばれることがあります。アームロールとフックロールに機能や意味の違いはありません。

呼び方が違うのは、メーカーによってアームロールの呼び方(製品名)が異なるためで、いずれも構造は共通しています。アームロールは新明和工業株式会社の登録商標で、フックロールは極東開発工業株式会社の登録商標です。現在生産は終了していますが、イワフジ工業株式会社はロールリフトという登録商標で脱着ボディーシステム車を製造していました。

アームロールの基本的な操作方法

アームロールの基本的な操作方法として、コンテナを車両に積み込む手順をご紹介します。すでにアームロールをコンテナの前に移動し、停車した状態を想定しています。

1.PTOを作動させてリモコンの電源を入れる

PTO
最初にコンテナを積み下ろしするためのアームに動力を持たせるため、PTOを作動させる必要があります。PTOとは、エンジンの動力を油圧に変換して、荷台の装置で使えるようにするための機構のことです。

PTOを入れるための準備として、シフトをニュートラルに入れ、サイドブレーキをかけます。クラッチペダルを踏んで運転席のPTOのスイッチをONにするとPTOが作動し始め、同時にアームロールのリモコンに電源が入ります。電源が入ったことを確認したら、クラッチペダルをゆっくり戻してクラッチをつなぎましょう。

※イラストはダンプのPTOを例にしていますが、PTOの仕組みはダンプもアームロールも同様です

2.ジャッキを出す

車両の後端にジャッキがある場合は、アームロールの後部にあるジャッキを出します。コンテナが重いと車両の前部が浮いてしまうことがあるため、ジャッキが車両を支えることで状態が安定します。

ジャッキの操作方法は、手動か電動かなど、トラックによって異なります。正しい手順を確認のうえ操作を行ってください。

3.アームのフックをコンテナに引っかける

リモコンでアームを出し、車両をバックします。アームがコンテナのアーム棒にかかる位置まで来たらリモコンでアームを上げて、コンテナのアーム棒に引っかけましょう。このとき、フックがコンテナのアーム棒の中央に確実にかかっているか確認してください。

4.コンテナを引き上げてコンテナを積む

フックが確実にコンテナに引っかかったことを確認できたら、リモコンを操作してコンテナを荷台に引き上げていきます。コンテナが荷台に載るときに、コンテナのレールが荷台のローラーの正しい位置に載っているか確認してください。コンテナと荷台がずれていると、コンテナが落下することがあり危険です。

5.ジャッキを格納する

コンテナを最後まで引き上げたら、積み込み前に出したジャッキを格納します。ジャッキを格納し忘れると、走行中にジャッキが段差に引っかかって壊れてしまうことがあるため、必ずジャッキを格納してから走行してください。

アームロールを操作するときのポイントと注意点

アームロールは正しく使用しないと、作業効率が落ちるだけでなく、重大な事故につながる危険性もあります。アームロールを操作する際のポイントと注意点を解説します。

コンテナを下ろすスペースを確認する

下ろしたコンテナは人力では動かせないため、指定の位置に正しく下ろす必要があります。コンテナを下ろす場所や、スペースが十分にあるかよく確認してください。

万が一コンテナが落下してしまったときに備えて、左右にも十分なスペースを確保できると良いでしょう。

周囲に人がいないか確認する

コンテナの積み下ろしをする際は、周囲の安全を確保し、人がいないことを確認してから作業を開始しましょう。コンテナの移動に巻き込まれてしまうなど、事故につながる可能性があるためです。

とくに操作を行う運転席からは、コンテナの後ろが死角となっています。コンテナを下ろす前に、必ず車から降りてコンテナの後ろまで行き、安全を確認してください。

また、万が一コンテナが落下してしまったときのために、車両の左右にも人がいないことを確認しましょう。

過積載にならないようにする

アームロールはコンテナごと積み下ろしをするため、積載物の内容を確認しないと重量オーバーのリスクがあります。

アームロール車に限りませんが、貨物車には最大積載量が決められており、最大積載量を超えて荷物を積むことは禁止されています。最大積載量より多くの荷物を積んでしまうと、車両や道路が損傷する原因になるだけでなく、走行時の安全性が下がり、横転や事故が発生することがあるためです。

発進する前にコンテナの扉やシートの確認をする

コンテナを積んだ後、発進する前にコンテナの状態を十分に確認することも重要です。コンテナの扉が閉まっていなかったり、シートの固定具が正しく取り付けられていなかったりすると、走行中に荷物がコンテナから飛び出してしまうおそれがあります。

道路で荷物が散乱すると、他の車両の交通の妨げになるばかりか重大な事故を起こす可能性もあります。荷物を再度積み込む時間と労力もかかってしまうため、コンテナの状態は必ず確認しましょう。

アームロールの代表的なメーカー

アームロールを製造している、代表的な架装メーカーをご紹介します。

新明和工業株式会社

新明和工業株式会社は、100年以上の歴史を持ち、航空機やパーキングシステムなども手広く手がけている架装メーカーです。新明和工業株式会社が製造しているアームロールは、国内の脱着ボディーシステム車のパイオニアであり、登録台数シェアトップを維持しています。

>>新明和工業株式会社

極東開発工業株式会社

極東開発工業株式会社も、日本を代表する架装メーカーのひとつです。極東開発工業株式会社では、アームロールはフックロールという登録商標で製造されています。中小型フックロールから大型フックロールまで、サイズのラインナップが豊富です。

>>極東開発工業株式会社

Hiab(ヒアブ)

HIABはスウェーデンのメーカーですが、日本各地に販売代理店があるため、日本でもHIAB製のアームロールが普及しています。HIABではマルチリフトという登録商標で、アームロールの製造を行っています。

>>Hiab

アームロールに関するよくある質問

アームロールの運転に必要な免許や最大積載量など、よくある疑問点についてまとめました。

アームロールの運転に必要な免許

アームロールを運転するために特別な免許は必要ありませんが、車両のサイズに合わせた運転免許証が必要です。必要な運転免許証の区分は、アームロール車両総重量と最大積載量から判断することができます。具体的には以下の表のとおりです。

<取得時期が平成29年3月12日以降の運転免許>

車両総重量 最大積載量
普通免許 3.5t未満 2t未満
準中型免許 7.5t未満 4.5t未満
中型免許 11t未満 6.5t未満
大型免許 11t以上 6.5t以上

アームロールはどれくらいの重さのコンテナを運べる?

アームロールにもさまざまなサイズの車両があり、車両のサイズによって積載できるコンテナの重量が異なります。トラックのサイズごとの最大積載量は、以下の表のとおりです。

ただし、表の最大積載量は車種ごとに若干の差があるため、目安の数値となっています。また、アームロールが積載する荷物の総重量はコンテナの自重を含むため、実際にコンテナ内に積載できるのは、最大積載量からコンテナの重量を引いた重量までです。

最大積載量(kg)
2~3t車 2,000~3,000
4t車 4,000
7t車 6,000~8,500
20t車 9,000~10,000
22t車 11,000
25t車 12,000

コンテナにはどんな種類がある?

アームロールはさまざまな場面で使われるため、コンテナも荷物の種類によって使い分けられています。コンテナの種類の一部をご紹介します。

種類 特徴
オープンコンテナ 上部が開いているコンテナ。産業廃棄物や農産物、木材など、さまざまな荷物の運搬に使われる。
天蓋付コンテナ 上部に蓋がついているコンテナ。肥料や家畜糞尿などの運搬に使われる。
フラットデッキ型コンテナ アオリがなく床面がフラットなコンテナ。重機の運搬などに使われる。
平ボディーコンテナ 平ボディーの荷台のような形状をしたコンテナ。資材の運搬などに使われる。
タンクコンテナ タンクローリーの荷台のような形状をしたコンテナ。液体や気体を運搬するために使われる。

コンテナの互換性

異なるメーカーのアームロールでも、コンテナの互換性があれば共通で使用できます。コンテナの互換性があるかどうかは、一般社団法人 日本自動車車体工業会が取り決めている互換性基準を確認します。コンテナに表示されているJABIAラベルという互換性を表すラベルが、同色であれば互換性があると判断できます。
コンテナの互換性
引用:脱着装置付コンテナ自動車|互換性に関する事例紹介|一般社団法人日本自動車車体工業会

まとめ

アームロールは、荷台のコンテナを積み下ろしするためのアームが備えられたトラックのことです。コンテナごと荷物を積み下ろしできるため、荷役作業の時間を大幅に短縮でき、車両がすぐに移動できるというメリットがあります。

ヤマダボディーワークスでは、アームロールに関連する部品も取り扱っています。ヒンジやサイドゲートロックなどのダンプパーツや、自動シート掛けクイックはアームロールで使用できるので、ぜひご活用ください。

ただし、自動シート掛けクイックは電源が必要になるため、脱着式コンテナで使う場合はどこから電源を取るのかという問題が発生します。車両から電源を供給してもらい、車両につないでいるときだけ動かしているといった使用例もあります。


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