フルトレーラーとは?構造や車体の種類、運転する際の注意点・ポイントを解説
2025年2月20日
トレーラーには、フルトレーラーとセミトレーラーの2種類があります。街中でよく見かけるトレーラーは、ほとんどがセミトレーラーであるため、フルトレーラーに馴染みがない人も多いでしょう。
この記事では、フルトレーラーの特徴や種類、フルトレーラーを運転する際に必要な免許や注意点について解説していきます。
目次
フルトレーラーとは?
画像引用:Cargo Trailer | 株式会社浜名ワークス
フルトレーラーとは何か理解する前に、トラクターとトレーラーについて整理しておきましょう。トラクターは、キャビンやエンジンを持ち、トレーラーを引っ張る役割の車両です。けん引車と呼ばれることもあります。トレーラーは、トラクターによって引っ張られる車両のことで、エンジンがないため自力で走行することができません。
トレーラーのうち、自立して重量を支えられるタイプがフルトレーラーです。自立せず、トラクターに荷重の一部を支えてもらう必要があるトレーラーはセミトレーラーといいます。
フルトレーラーは、自立できるという特徴によって、単体のトラックに連結することができます。そのため、より多くの荷物を運ぶことが可能です。フルトレーラーをけん引するトラクターは、フルトレーラーを外して普通のトラック(単車)として使うこともできます。このようなフルトレーラーを牽引する、同一シャーシにキャビン・荷台・連結機能を搭載した車両をフルトラクターと言います。
フルトレーラーの特徴と、セミトレーラーとの違いについて詳しく解説します。
フルトレーラーは全長何メートル?
フルトレーラーの寸法は、法令によって全長18m、全幅2.5m、全高3.8m以内と定められています。通常の自動車は全長が12m以内と定められていますが、高速自動車国道を走行するフルトレーラーは18m、セミトレーラーは16.5mまで許容されています。
フルトレーラー、セミトレーラー、大型トラックの長さの違いは、以下の表のとおりです。
全長 | トラクター | トレーラー | |
フルトレーラー | 18m以内 | 12m以内 | 12m以内 |
セミトレーラー | 16.5m以内 | 12m以内 | 12m以内 |
大型トラック | 12m以内 | - | - |
以下で詳しく解説しますが、フルトレーラーの全長は、特殊車両通行許可の手続きを行えば最大25mまで許容されます。
特殊車両通行許可を受けていれば全長25mまで許容される
フルトレーラーの全長の基本的な制限は、18m以内となっていますが、これは特別な許可を受けない一般的な条件下での規定です。近年ではドライバー不足などの社会問題により、一定の条件下で特例が認められており、許容される全長が徐々に拡大しています。
18mを超える場合でも、事前に通行ルートの確認を行い、特別車両通行許可を取得することで、21mまでのフルトレーラーの運行が認められます。さらに、特定の条件を満たし、特殊車両通行許可を受けることで、21m以上、最大25mまでのフルトレーラーも走行可能です。
ただし、21m以上のフルトレーラーを走行するためには、通行ルートや車両装備、積荷の種類、運転者などに条件があり、それらを満たした上で申請を行う必要があります。
規制緩和に伴う取り組み
フルトレーラーの全長に関する規制緩和を受け、西濃運輸株式会社、日本通運株式会社、日本郵便株式会社、ヤマト運輸株式会社の4社は、関東ー関西間の幹線輸送において、スーパーフルトレーラーSF25を活用した共同輸送を、2019年3月から開始しています。
取り組みの内容は、西濃運輸、日本通運、日本郵便のトラクターが関西GWと厚木GWでヤマト運輸のトレーラーを連結し、幹線輸送を行うというものです。各社の拠点からGWまではトラクターのみで輸送を行いますが、GWでトレーラーを連結することで、幹線輸送できる積載量が従来の大型トラックの2倍となります。
この取り組みにより、事業者の壁を越えた輸送の効率化を図り、トラックドライバーの人手不足問題が緩和されることが期待できます。さらに、車両台数が減るため、CO2の排出低減にも貢献します。
フルトレーラーとセミトレーラーの違い
トレーラーは、「フルトレーラー」と「セミトレーラー」に分類されます。フルトレーラーとセミトレーラーは、トレーラーが自立できるかどうかで見分けられます。
フルトレーラーは、前後もしくは中央に車軸があり、トレーラーが自立できることが特徴です。トラクターはトレーラーの荷重を支える必要がなく、引っ張るだけで走行できます。フルトレーラーのトラクターは、荷台がついた通常のトラックに連結機能がついた車両(フルトラクター)です。
一方で、セミトレーラーは、トレーラーの前の部分に車輪がなく、前側の荷重を自分で支えることができません。そのため、トラクターに荷重の一部を支えてもらいながら、けん引されます。セミトレーラーのトラクターは、トラクターヘッドと呼ばれる荷台のない車両です。
このように、フルトレーラーとセミトレーラーでは、トラクターの構造にも違いがあります。
フルトレーラーを利用するメリット
フルトレーラーのメリットは、一度に大量の荷物を運べることです。フルトレーラーは車軸に荷重が分散するため、最大積載量を増やしやすく、一度に多くの荷物を積載できます。
また、トレーラーをトラクターから切り離せるという特徴を活かした柔軟な輸送が可能な点もメリットです。
例えば、トレーラーを中継基地で切り離して別のトラクターでけん引したり、トレーラーだけをフェリーに積んで到着後に違うトラクターでけん引したりといった、さまざまな使い方ができます。セミトレーラーとは異なり、トラクターにも荷物を積載できるため、中継基地から別々の目的地に輸送することも可能です。
フルトレーラーの構造(ドリー式・センターアクスル式)
フルトレーラーは、構造の違いから以下の2種類に分類されます。
- ・ドリー式
- ・センターアクスル式
それぞれの違いを詳しく解説します。
ドリー式
ドリー式とは、前方にドリーと呼ばれる車軸を持つ台車があるフルトレーラーのことです。ドリーがトレーラーの重量の一部を支えています。
ドリーはターンテーブルのように回転する構造になっており、トラクターが曲がる際に、ドリーのタイヤも左右に曲がる仕組みです。3連結になっているような感覚があり、運転が難しいと言われています。
また、ドリーを取り外してセミトレーラーとして機能するタイプもあります。連結全長12m以内の場合は、通行認定不要のフリー走行が可能です。
センターアクスル式
センターアクスル式とは、車軸(アクスル)が車両の中央に集まっているフルトレーラーです。前方にドローバーという長い棒状の連結器があり、トラクターの後軸後部に連結して使用します。ドリー式のように折れ曲がる部分がないため、セミトレーラーに近い感覚で運転が可能です。
フルトレーラーの車体の種類
フルトレーラーのボディタイプには以下の種類があり、運ぶ荷物の種類や用途によって使い分けられています。
- ・平ボディ
- ・バンタイプ
- ・ダンプトレーラー
- ・ライトトレーラー
それぞれどのような特徴のフルトレーラーなのか解説します。
平ボディ
画像引用:平ボディー車両|車両紹介|千葉県千葉市の運送会社|株式会社中村産業
平ボディは、荷台に屋根がないオープンタイプで、フルトレーラーをはじめさまざまな種類のトラックに採用されています。後方と側方にアオリが付いており、荷物を上から積み下ろすことが可能です。
バンタイプのような屋根付きの車両よりも車両重量が軽いため、その分最大積載量に優れているのが特徴です。重量物や長尺物の積載に適しています。
バンタイプ
バンタイプは、箱型の貨物室を持つタイプです。汎用性が高く、フルトレーラー以外にもさまざまな種類のトラックに対応しています。貨物室が密閉されているため、食品や家具、電子機器など、雨やほこりから守りたい荷物を運ぶのに便利です。荷台のサイドパネルが開く、ウイング車のフルトレーラーも広く使われています。
ダンプトレーラー
ダンプトレーラーは、荷台を傾けられるタイプのトレーラーです。荷台を傾けることで、土砂やゴミなどの積載物を一気に排出することができます。
ダンプトレーラーは18t弱と積載量に優れていますが、10t積みのダンプトラックと比較するとあまり普及していません。ダンプは足場の悪い工事現場で使われることが多く、重量が大きいほど転倒の危険性が高まるためです。ダンプトレーラーは、主に土砂採取場からコンクリートプラントまでの原料の輸送に使われています。
また、脱着ボディとコンテナを採用したフルトレーラーもあります。このようなフルトレーラーでは、トラクターとトレーラーのコンテナを入れ替えることができます。
ライトトレーラー
画像引用:エアストリームジャパン
ライトトレーラーとは、キャンピングトレーラーなどの比較的軽量なトレーラーの通称です。ライトトレーラーには、センターアクスル式フルトレーラーが多く見られます。
連結装置も小型で簡易的であるため、垂直耐荷重は大きくありません。そのため、重積載向けの大型貨物トレーラーとは異なる用途で使われています。
フルトレーラーの代表的なメーカー
フルトレーラーを製造している代表的な架装メーカーとして、以下の4社をご紹介します。
- ・東邦車輌株式会社
- ・日本トレクス株式会社
- ・日本フルハーフ株式会社
- ・株式会社浜名ワークス
東邦車輛株式会社
東邦車輌株式会社は新明和グループの企業であり、トレーラーやタンクローリー、ダンプなどを製造している架装メーカーです。東邦車輌では、ウイング車や平ボディーのフルトレーラーを取り扱っています。
ドリー式とセンターアクスル式どちらの製造も行っており、種類が豊富です。フルトレーラーのドリーを外すことで、セミトレーラーとして使える「スマートウイング」という製品があります。
スマートウイングの使用例として、拠点間移動はフルトレーラーで輸送し、拠点以降の配送輸送ではトラクターとトレーラーを分けることができます。フルトレーラーをセミトレーラーとして使って別のトラクターにけん引してもらい、元々のトラクターと別れてそれぞれの目的地へ輸送が可能です。このように、スマートウイングは輸送方法の選択肢が広がり、効率化を実現できるボディです。
日本トレクス株式会社
日本トレクス株式会社は極東開発工業の連結子会社で、トレーラーの製造を得意とする架装メーカーです。トレーラーのほかにもウィング車やバンボディー、輸送コンテナ、シェルタ等、大型輸送機器の製造・販売を行っています。
日本トレクスのフルトレーラーには、バンフルトレーラー、粉粒体運搬フルトレーラー、コンテナ積載フルトレーラーがあります。
日本フルハーフ株式会社
日本フルハーフ株式会社は、いすゞ自動車と資本関係にある架装メーカーです。トレーラーのほかにもドライバンやウイングルーフ、温度管理バン、テールゲート、コンテナなど、さまざまな架装を取り扱っています。
日本フルハーフのフルトレーラーはセンターアクスル式で、ウイングバン、ドライバン、コンテナ荷台と複数のボディタイプに対応しています。
株式会社浜名ワークス
株式会社浜名ワークスは、複数台積みのキャリアカーを製造している架装メーカーで、フルトレーラー仕様の車両も取り扱っています。平ボディやドライバン、ウイングなどのカーゴ車の種類も豊富です。
浜名ワークスでは、センターアクスル式のフルトレーラーを製造しています。ドローバーとシャーシを一体化することでセミトレーラーと同様の操作性を実現し、熟練技術がなくてもバックや車庫入れができるように設計されています。
フルトレーラーの運転に必要な免許
フルトレーラーを運転するためには、大型免許とけん引免許が必要です。
フルトレーラーは全長や最大積載量が大きく、準中型免許や中型免許の区分では運転できません。車両総重量11t以上、最大積載量6.5t以上の車両を運転できる大型免許が必要です。
また、フルトレーラーの運転にはけん引免許も必要です。けん引免許とは、けん引装置を持つ車両が、車両総重量750kgを超える他の車両をけん引する際に必要な免許です。フルトレーラーは車両総重量が750kgを超えるため、大型免許とあわせて、貨物の輸送に必要なけん引第一種免許も取得しなければ運転できません。
なお、けん引免許は運転免許の中でも取得難易度が高いと言われています。
フルトレーラーを運転する際の注意点・ポイント
フルトレーラーは連結部があるため挙動が複雑で、単車やセミトレーラーとは操作要領が異なります。難易度が高いといわれる、フルトレーラーの運転の注意点を解説します。
カーブ
フルトレーラーでカーブを曲がる際は、内輪差が大きいことに注意が必要です。内輪差は、ホイールベース(前輪と後輪との距離)が長いほど大きくなります。フルトレーラーの全長は18m以内と非常に長いため、カーブの際は大きな内輪差が生じます。
右カーブ時は大回りをして、トレーラーの内側が車道からはみ出ないよう注意しましょう。
左カーブ時は、トレーラーの前部がトラクターよりも外側を通ります。左折前に車両を右にふりすぎて車線ギリギリで急ハンドルを切ると、トラクターが対向車線にはみ出てしまいます。対向車に衝突してしまう危険性があるため、右側にも注意しながら曲がりましょう。
バック
フルトレーラーをバックする際は、トレーラーを動かしたい方向の逆にハンドルを切る必要があります。バックで左に曲がりたいときは、ハンドルを左に切るのではなく、右に切りながら下がることで車両全体が左に折れるため、左に曲がって行きます。
ただし、ドリー式とセンターアクスル式では構造が異なるため、バック時の操作要領が異なります。センターアクスル式は、連結部が一箇所のみのためセミトレーラーと似た感覚で操作が可能です。ドリー式は連結部が二箇所あるため、曲がりたい方向にハンドルを切りながらバックしましょう。
車庫入れ
フルトレーラーを車庫入れする際、真っ直ぐ後退しているつもりでも、少しずつ曲がってしまうという現象がよく起こります。曲がってしまう原因は、トラクターとトレーラーがずれてしまっていることです。
トレーラーがずれてしまったら、ずれた方向にハンドルを切ってトレーラーとトラクターを一直線にします。一直線になったらハンドルを反対に切り、トレーラーが目標のラインに合うように戻しましょう。ラインにトレーラーが合ったら、ハンドルを戻していくと修正できます。
フルトレーラーの車庫入れは、何度か切り返すことを前提で行うとよいでしょう。無理に一発で入れようとせず、確実な操作を心がけることが重要です。
まとめ
フルトレーラーは、車軸が前後や中央に付いており自立できるトレーラーのことで、荷台の付いた単車のようなトラクターにけん引されます。フルトレーラーにもいくつかのボディタイプがあり、荷物の種類や用途によって使い分けられています。
ヤマダボディーワークスでは、多くのトラック部品を取り扱っています。さまざまなボディタイプに対応しているため、フルトレーラーの部品の取り付けや交換の際にもぜひご活用ください。