セミトレーラーとは?構造や車体の寸法・種類、運転時の注意点を解説
2025年2月27日
セミトレーラーは、トレーラーと呼ばれる「被けん引自動車」の一種で、トラクターというけん引車に引かれる荷台部分の車両を指します。日本ではセミトレーラーが最もポピュラーで、街中で見かけるトレーラーのほとんどがセミトレーラーです。
この記事では、セミトレーラーの基本的な構造やフルトレーラーとの違い、代表的な種類やメーカーなど、セミトレーラーについて詳しく紹介します。
目次
セミトレーラーとは?
セミトレーラーはトレーラーの一種で、トラクターと呼ばれるけん引車に引かれる荷台部分の車両のことです。セミトレーラーの基本構造と、フルトレーラーとの違いについて解説します。
セミトレーラーの構造
セミトレーラーは、キャビンや荷台などの全てが一体構造となっている通常のトラック(単車)とは異なり、トラクターと分離する構造です。
トラクターはキャビンやエンジンを持ち、走行に関する機能を担います。セミトレーラーは荷台部分を持ち、積載に関する機能に特化しています。そのため、セミトレーラーにはエンジンのような動力がなく、トラクターにけん引されて初めて機能する仕組みです。
トラクターにはカプラという差し込み口のような連結器があり、セミトレーラーにあるキングピンという大きな部品とつなぐことで連結します。
セミトレーラーは車両の後方にしか車輪がついておらず、前方の荷重はトラクターに支えてもらっています。トラクターから取り外して単体にする際は、前方にあるランディングギアという部品を地面まで伸ばして自立できるようにするのが一般的です。
フルトレーラーとの違い
トレーラーには、セミトレーラーの他にフルトレーラーという種類が存在します。セミトレーラーとフルトレーラーの違いは、「自立できるかどうか」と「けん引するトラクターの形状」にあります。
セミトレーラーは車両の前側に車輪がなく、自立できません。そのため、セミトレーラーの前側をトラクターに支えてもらいながら走行します。セミトレーラーをけん引するトラクターは、トレーラーヘッドと呼ばれる、キャビンやけん引装置など最低限の走行装置を備えた形状をしています。
一方のフルトレーラーは、車両の前方もしくは中央に車輪があるので、自立可能です。トラクターはフルトレーラーの荷重を支える必要がなく、引っ張るだけでよいため、単車のような荷台が付いた形状をしています。
したがって、フルトレーラーが連結すると、2つの荷台が連なった状態になるのが特徴です。フルトレーラーを牽引する同一シャーシに、キャビン・荷台・連結機能を搭載した車両をフルトラクターと呼びます。
>>フルトレーラーとは?構造や車体の種類、運転する際の注意点・ポイントを解説
セミトレーラーを利用するメリット
セミトレーラーは一見、単車のような大型トラックと変わりないように思えますが、セミトレーラーならではのメリットがあります。
セミトレーラーは荷台に特化した車両であるため、単車に比べると積載容量が確保しやすく、一度に多くの荷物を運搬できます。また、ポールトレーラーのような特殊なトレーラーを連結すれば、単車では運べない長尺物を運ぶことも可能です。
さらに、セミトレーラーをトラクターと切り離すことで、トラクター単体でも走行できるので、柔軟な輸送を実現します。単車では荷役作業中の走行はできませんが、トラクターの場合は荷役作業はトレーラー単体で行い、その間もトラクターは別の輸送に活用できます。
セミトレーラーの寸法・規格
セミトレーラーの寸法は、法令によって上限が全長16.5m、全幅2.5m、全高3.8mと定められています。ただし、通行許可または通行可能経路の確認の回答が得られる場合は、全長が以下の長さまで認められます。
- ・後軸の旋回中心から車両後端までの距離が3.2m以上3.8m未満:全長17.5mまで
- ・後軸の旋回中心から車両後端までの距離が3.8m以上4.2m未満:全長18.0mまで
- ・セミトレーラーをけん引するための自動車の連結装置の中心が当該車両の後軸の車輪よりも後ろに備えるもの:全長21.0mまで
また、フルトレーラーや大型トラックとの全長の違いは、以下の表のとおりです。
車種 | 全長 | トラクター | トレーラー |
---|---|---|---|
フルトレーラー | 18m以内 | 12m以内 | 12m以内 |
セミトレーラー | 16.5m以内 | 12m以内 | 12m以内 |
大型トラック | 12m以内 | - | - |
セミトレーラーの種類
セミトレーラーは用途によって、さまざまな形状が存在します。セミトレーラーの中から、主要な種類を紹介します。
バントレーラー
画像引用:特殊車両通行ハンドブック2022
バントレーラーは、密閉型の箱型の荷台を持つセミトレーラーで、多様な用途で採用されています。荷物を雨や風などから保護できるため、食品や衣類、精密機械などの運搬に適しているのが特徴です。荷台内の空間を確保できるうえ、防犯性が高いというメリットもあります。
ウイングトレーラー
ウイングトレーラーは、ウイング車と同じ機能を備えたトレーラーで、荷台の側壁がウイング状に開閉します。バントレーラーは基本的に後方の観音扉から荷物の積み下ろしを行いますが、ウイングトレーラーは側面が開くため効率よく荷役作業を行えます。
>>ウイング車とは?種類やサイズごとの寸法、取扱う際の注意点を解説
コンテナトレーラー
海上コンテナや鉄道コンテナなどのコンテナを輸送するために設計されたトレーラーです。コンテナを強力に固定するための装置(ツイストロックなど)を装備しており、効率よくコンテナの積み下ろしができるようになっています。
コンテナを船舶もしくは鉄道と積み替えることで、コンテナトレーラーとの間で輸送方法を切り替える、モーダルシフトへの活用が可能です。
ただし、モーダルシフトには依然として課題も残されています。モーダルシフトの課題は、国際海上コンテナで主力の40フィートや20フィートコンテナを鉄道で輸送できるものの、積み替え可能な鉄道ターミナルや輸送出来る路線が限られている点です。
そのため、国際海上コンテナを日本国内輸送モードに移行するには、中身の詰め替えを前提としており、インターモーダル輸送(コンテナの中身の詰め替えを必要としない輸送方法)の実現を阻む障壁となっています。
>>コンテナ専用トラック(コンテナシャーシ)とは?その特徴と役割
キャリアトレーラー
画像引用:Car Carrier | 株式会社浜名ワークス
キャリアトレーラーは、自動車を輸送するために設計されたトレーラーです。自動車の積載に特化しているため、車体の固定も容易に行えるようになっており、上下に分かれて複数台の自動車を積載できる種類もあります。
主に新車をディーラーへ輸送する際や、中古車業車間の輸送などに使用されます。
タンクトレーラー
タンクトレーラーは、液体や気体のような流動性のあるものを輸送するためのタンクを備えたトレーラーです。主に食品原料や燃料、化学薬品などを輸送します。高い密閉性や安全性を実現するために、タンクにはさまざまな工夫や安全装置が施されています。
低床型トレーラー
画像引用:その他トレーラ|製品情報(株式会社トーヨートレーラー)
低床型トレーラーは、屋根や側壁がない平らな荷台を持つトレーラーです。荷台が地面に近く、荷物の積み下ろしがしやすい特徴があります。また、重心が低いため、安定性が高いのもメリットです。
低床型トレーラーは鋼材・木材などの長尺物や、重機や大型機械、高さのある荷物の輸送などに使用されます。
セミトレーラーの代表的なメーカー
セミトレーラーを製造している架装メーカーから、主要な企業を紹介します。
東邦車輛株式会社
東邦車輛株式会社は新明和グループの企業であり、トレーラーの製造を手がける架装メーカーです。トレーラーの他にも、タンクローリーやダンプなどの架装も行っています。
東邦車輛のセミトレーラーには、低床セミトレーラー、ウイングセミトレーラー、バン型セミトレーラー、海上コンテナセミトレーラーなど、多彩な種類があります。
日本トレクス株式会社
日本トレクス株式会社は、極東開発工業株式会社の連結子会社であり、トレーラーの製造を得意とする架装メーカーです。
ウイングセミトレーラーやコンテナセミトレーラーを筆頭に、平床・低床セミトレーラー、重量物運搬セミトレーラー、バンセミトレーラーなど、さまざまなタイプのセミトレーラーを製造しています。
株式会社浜名ワークス
株式会社浜名ワークスは、平ボディやドライバン、ウイング車、キャリアトレーラーなどの製造を行っている架装メーカーです。
特に複数台積み車両運搬車の種類が豊富で、トレーラータイプも展開しています。キャリアトレーラーも多くの種類があり、セミトレーラーだけでなく、フルトラクターのキャリアカーの製造も行っています。
セミトレーラーを扱うために必要な免許・資格
セミトレーラーを運転するには、大型免許とけん引免許が必要です。セミトレーラーは全長や最大積載量が大きく、準中型免許や中型免許では運転できません。そのため、大型免許の取得が求められます。
また、セミトレーラーを扱うには、けん引免許も欠かせません。けん引免許とは、けん引装置を持つ車両が、車両総重量750kgを超える車両をけん引する際に必要な免許です。
セミトレーラーは車両総重量が750kgを超えるため、貨物の輸送に必要な「けん引自動車第一種免許」も取得しなければ運転できません。なお、けん引免許は運転免許の中でも取得難易度が高いと言われています。
運転免許のそれぞれの区分で運転できるサイズは、以下のとおりです。
区分 | 車両総重量 | 最大積載量 |
---|---|---|
準中型免許 | 7.5t未満 | 4.5t未満 |
中型免許 | 11t未満 | 6.5t未満 |
大型免許 | 11t以上 | 6.5t以上 |
セミトレーラーを運転する際の注意点
セミトレーラーは単車と比べると、運転する難易度が高くなっています。セミトレーラーはトラクターとトレーラーの連結部分が折れるように曲がるため、通常のトラックとは運転の操作要領が異なるからです。
カーブを曲がる際は、トレーラーが後輪を軸に動くので内輪差が大きくなり、狭い道では特に大回りを意識して旋回する必要があります。
後退時は最初のハンドル操作が通常のトラックとは反対になります。後退中はわずかなハンドルさばきでトレーラーが大きく動くため、難易度が高く、慣れるには経験が必要です。
セミトレーラーは通常のトラックと比べて、急カーブや急ブレーキ時の安定性が低い特徴があります。無理な運転をすると、以下のようなトレーラー特有の危険な状態に陥ることがあるため、慎重な運転が求められます。
出典:自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う 一般的な指導及び監督の実施マニュアル 《第2編 応用編:一般的な指導及び監督指針の解説(詳細版)》
危険な状態 | 詳細 |
---|---|
ジャックナイフ | 急ブレーキや急ハンドルなどでトラクターとトレーラーの連結部分がジャックナイフのように「く」の字に曲がり、操縦不能になる現象 |
トレーラースイング | トレーラーの後輪がロックしたときに、トレーラーが進路外側(あるいは対向車線側)に大きく振られる現象 |
ブラウアウト | トレーラーが制御を失うことで、トラクターとトレーラーが一直線にカーブを外れてしまう現象 |
まとめ
セミトレーラーとは、トラクター(トレーラーヘッド)にけん引される荷台部分の車両のことです。セミトレーラーは荷物の積載に特化した車両であるため、単車に比べると多くの荷物を運搬できるメリットがあります。
また、セミトレーラーにも、バントレーラーやキャリアトレーラーなど多くの種類があり、用途によって使い分けられています。
ヤマダボディーワークスでは、セミトレーラーに関する部品も多く取り扱っているので、ぜひご活用ください。