タンクローリーとは?種類や特徴・運転に必要な免許について解説
2024年9月7日
タンクローリーは、特定の輸送物を積載するための、専用のタンクを備えたトラックのことです。積載物には燃料や飲料水、高圧ガスなどさまざまな種類があります。
こちらでは、タンクローリーの基本的な構造やタンクローリー種類について解説します。タンクローリーを運転するために必要な免許についても合わせて解説します。
【この記事で分かること】
- ・タンクローリーの基本
- ・タンクローリーの容量
- ・タンクローリーを扱うのに必要な免許
目次
タンクローリーとは
タンクローリーは、トラックの荷台に液体や粉粒体、高圧ガスなどを運搬するための専用のタンクを備えたトラックです。ローリーとはイギリス英語でトラックのことで、タンクローリーは「タンクを備えたトラック」を意味します。
他のトラックとの違いは、タンクローリーは運搬物を特定しており、それに応じた強度や構造を持つタンクが備え付けられていることです。運搬物は燃料、化学物質、食品、高圧ガスなど、タンクローリーの種類ごとにさまざまです。
タンクの形状や構造は運搬するものによって異なりますが、内部圧力に対する耐性を高めるために円筒状や楕円形のものが多くなっています。
タンクローリーの構造
タンクローリーが備えているタンクが、どのような構造になっているのか解説します。ここで解説するタンクはガソリンや軽油など、液体の危険物を運ぶタンクローリーの構造です。タンクローリーの種類によっては側面枠がないなど、構造が異なる場合があります。
タンクの外側の構造
タンクローリーのタンクには、多くの安全対策が施されています。
タンクの上部にはマンホールと防護枠が備わっています。マンホールには注入口、検尺棒、空気安全弁が設置されています。防護枠は万が一マンホールから燃料などが溢れても、流れ落ちないようにするためのものです。
底部には燃料などを排出するためのバルブ(底弁)があり、この開閉のためのハンドルはタンク上部にあります。タンクの側面の四隅にある側面枠といい、タンクローリーが横転した際にタンクが完全に逆さまになることを防ぐものです。
タンクの内側の構造
タンクは、外見からは一つの大きなタンクに見えますが、内部は仕切板によっていくつかの部屋に区切られています。仕切り板はタンクの内部に溶接されており、それぞれの部屋が完全に独立しているため、部屋ごとに違う種類の燃料を入れることも可能です。
また、全ての部屋に防波板が設置されており、走行の振動などでタンク内の液体が揺れるのを防いでいます。タンク内の液体が波のように揺れると、大きな液体動揺力が発生し車両を揺さぶってしまうため、走行中の安全性に影響します。液体動揺力によって車両が左右に揺さぶられると、旋回時などに横転する可能性もあるため、防波板によってタンク内の液体の動きを抑えているのです。
タンクローリーの容量・サイズ
タンクローリーには、灯油販売などで住宅街を走行する小型タンクローリーから、大量輸送を行う大型タンクローリーまでさまざまなサイズが存在します。タンクローリーの容量は最小で1.2kl、最大で30klと法令によって定められています。
また、タンクの中はいくつかの部屋に区切られていますが、1つの部屋の最大容量は4klと定められています。
積載物や車両ごとによって詳細は異なりますが、トラックのサイズごとの大まかなタンク容量の目安は以下のとおりです。
- ・小型トラック:タンク容量2kl
- ・中型トラック:タンク容量4kl
- ・大型トラック:タンク容量16kl
タンクローリーの種類
タンクローリーは、主に以下の3種類に分類されます。
- ・危険物ローリー
- ・非危険物ローリー
- ・高圧ガスローリー
それぞれの特徴を解説します。
危険物ローリー
危険物ローリーとは、ガソリンのような燃料や化学薬品などの危険物を運ぶタンクローリーです。危険物ローリーには高い安全性が求められるため、さまざまな設計や安全装置が施されています。
タンクやバルブの素材には、腐食や化学変化に耐えられるステンレスやアルミニウム合金が使われています。さらに、漏れ防止装置や圧力調整装置、上下設備なども、重要な役割を果たす安全装置です。
非危険物ローリー
非危険物ローリーは、危険性のない液体や粉粒体を運搬するタンクローリーです。危険物ローリーのような厳重な防火対策などは必要ありませんが、安全性や作業効率性を重視した構造になっています。
また、牛乳や飲料水、ジュースなどの食品を運搬するタンクローリーはタンク内部を清潔に保つ必要があり、衛生管理が重要です。そのため、腐食に強いステンレスが使われていたり、内部が容易に洗浄できる構造になっていることが多くなっています。
高圧ガスローリー
高圧ガスローリーは、液化天然ガス(CNG)や液化石油ガス(LPG)、酸素や窒素などの高圧ガスを運搬するタンクローリーです。
高圧ガスローリーのタンクは高圧に耐える必要があるため、高強度の特殊鋼材が使用されています。さらに、過剰な圧力がかかった際に自動で圧力を解放する圧力調整システムや、防爆装置など多くの安全装置が備えられています。
タンクローリーを運転するのに必要な資格
タンクローリーを運転するために必要な資格は積載物によって異なります。主に必要になる資格としては以下があります。
- ・運転免許証
- ・けん引免許
- ・危険物取扱者 乙種第4類
- ・毒物劇物取扱者
- ・高圧ガス移動監視車
運転免許証
タンクローリーを運転する際には、車両のサイズに応じた運転免許が必要です。
タンクローリーは大型車両が多いため、大型免許が必要になることが多いでしょう。ただし、なかには小型のタンクローリーもあります。最大積載量が2kl(2t)未満で車両総重量が3.5t未満の小型タンクローリーであれば普通免許で運転可能です。
下表は、トラックのサイズごとに、必要な運転免許をまとめたものです。
<取得時期が平成29年3月12日以降の運転免許>
車両総重量 | 最大積載量 | |
---|---|---|
普通免許 | 3.5t未満 | 2t未満 |
準中型免許 | 7.5t未満 | 4.5t未満 |
中型免許 | 11t未満 | 6.5t未満 |
大型免許 | 11t以上 | 6.5t以上 |
けん引免許
タンクローリーはセミトレーラー型の車両が多く、これを運転するためには「けん引免許」が必要です。けん引免許とは、車両総重量750kgを超える車両をけん引するために必要な免許です。
取得するための条件は大型特殊免許、大型免許、中型免許、準中型免許、普通免許のいずれかを保有しており、年齢が満18歳以上、視力が両眼で0.8以上(1眼で0.5以上)あることに加え、色彩識別能力、深視力、聴力の検査に合格する必要があります。その上で、教習所で規定の教習や試験を受けることで、免許が交付されます。
危険物取扱者 乙種第4類
運搬物がガソリンのような危険物のタンクローリーの場合、危険物取扱者乙種4第類の資格が必要です。危険物取扱者乙種4第類はガソリン、軽油、重油、灯油などの引火性液体が取り扱える資格です。
取得するためには3科目の学科試験を受け、全てで60%以上の正答率が必要となります。受験するために年齢制限などの条件はありませんが、合格率は30〜40%となっており、取得難易度が高い資格です。
毒物劇物取扱者
タンクローリーで塩素やアンモニアのような劇物を運搬するためには、毒物劇物取扱責任者の資格が必要です。
運転手自身が毒物劇物取扱責任者の資格を持っている必要はありませんが、運送業者にはこの資格を持つ責任者を配置し、運搬の安全を確保する義務があります。運転手は責任者の指導のもと、適切に運搬作業を行うことが求められます。
高圧ガス移動監視者
タンクローリーで高圧ガスや液化天然ガスなどを運搬するためには、高圧ガス移動監視者の資格が必要です。高圧ガスの輸送は危険が伴うため、輸送中のガスの状態を監視し、異常が発生した際に速やかに適切な対応が取れる必要があります。
高圧ガス移動監視者の資格を取得するためには、「法令」3時間、「学識と保安管理技術」11時間の講義を受け、検定試験に合格しなければなりません。
タンクローリーに関するよくある疑問
タンクローリーに関する、よくある疑問に対して回答していきます。
タンク車との違いは?
一般的には、「タンク車」もタンクローリーを指します。国土交通省が公開しているタンク車の構造要件は以下のとおりです。
危険物、高圧ガス、食料品等の液状の物品(以下「液体等」という。)を専用に輸送する自動車であって、次の各号に掲げる構造上の要件を満足しているものをいう。
- 密閉されたタンク状の物品積載設備を有すること。
- 1の物品積載設備には、液体等を積み込むための適当な大きさの投入口を有し、かつ、液体等を排出するための適当な大きさの排出口を有すること。
- 排出するためのポンプ等を作動させるための動力源及び操作装置を有すること。
ただし、自然落下方式により液体等を排出する構造又は液体等を排出するための動力を外部から供給を受ける構造のものにあっては、この限りでない。
タンク車とタンクローリーは、定義上も同じか非常に近いものであることが分かります。
ただし、鉄道で使用されるタンク型の荷台を取り付けた貨車や、水槽付き消防車もタンク車と呼ばれています。これらは名称は同じであるものの、上記の定義のタンク車とは別のものです。
普通免許で運転できるタンクローリーはある?
タンクローリーは大型の車両が多く、基本的には中型・大型免許が必要ですが、最大積載量が2kl(2t)未満で車両総重量が3.5t未満の小型タンクローリーであれば、普通免許で運転可能です。
例えば、小さいものでは灯油販売で使用される、軽トラックをベースとしたタンクローリーが存在します。このようなタンクローリーであれば、普通免許でも運転が可能です。ただし、燃料を積載する場合は危険物取扱者の資格は別途必要になるため、運転免許証以外の資格についても注意が必要です。
タンクローリー用のおすすめ商品紹介
ヤマダボディーワークスで扱っている、タンクローリーに関するおすすめの商品をご紹介します。
タンクローリー錠
タンクローリーには、タンクの横にホースなどを収納するためのホース箱が設置されています。タンクローリー錠は、ホース箱のふたを開閉する際のロックとなる部品です。
2種類のタンクローリー錠をご紹介します。どちらも用途は同じですが素材が異なるため、使用環境に合わせて選択できます。
タンクローリー錠 メッキ
「タンクローリー錠 メッキ」は、鉄製のタンクローリー錠です。レバー部分を起こしたり倒したりすることで、ロックの開閉が行えます。
ステンレスタンクローリー錠 C-1844 SUS304 (穴付)
「ステンレスタンクローリー錠 C-1844 SUS304 (穴付)」は、サビに強いステンレス製のタンクローリー錠です。タンクローリー錠は車外で使われるため、腐食に強いステンレス製の製品がおすすめです。
滑り止め金具
タンクローリーの架装物は特殊な形状をしていることが多いため、他のトラックのように縦根太がついていないことがあります。タンクローリーの架装物の固定には、滑り止め金具が使われます。
まとめ
タンクローリーとは、特定の運搬物を輸送するために専用のタンクを備えたトラックのことです。タンクローリーには危険物ローリーや非危険物ローリー、高圧ガスローリーといった種類があります。タンクローリーは燃料や高圧ガスといった危険物を運搬する車両もあるため、安全性を高めるためにさまざまな設計や安全装置が施されています。
タンクローリーを運転するためには運転免許証の他に、けん引免許や危険物取扱者などの資格が必要な場合があります。必要資格は、タンクローリーの構造や輸送物によって異なります。
ヤマダボディーワークスではタンクローリー錠や滑り止め金具といった、タンクローリーに関する商品も取り扱っているので、ぜひご活用ください。