ウイング車とは?種類やサイズごとの寸法、取扱う際の注意点を解説
2025年1月6日
ウイング車は、荷物を効率的に積み下ろしできるよう、荷台のサイドパネルが鳥の翼のように大きく開くタイプのトラックです。
この記事では、ウイング車の特徴や種類について詳しく解説するとともに、使用時の注意点や安全対策についても取り上げます。ウイング車をより効率的に、そして安全に使うポイントを知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
ウイング車とは
ウイング車とは、荷台のサイドパネルが上に開くようになっているトラックのことです。走行時はバンボディのような形をしていますが、サイドパネルが鳥の翼のように開くことからウイング車と呼ばれています。
ウイング車はサイドパネルが大きく開くため、車両の側方から任意の荷物を積み下ろしできるのが特徴です。積み下ろしの作業効率が高いため、物流や運搬業界で幅広く使われています。
一方で、「箱車」と呼ばれるバンボディは荷台後方が観音扉になっており、そこから荷物の積み下ろしをするタイプが一般的です。側面にドアが付いている仕様もありますが、基本的には荷物を扉の手前から順番に下ろしていく必要があり、奥に入っている荷物はすぐに出せません。
ウイング車の構造の種類
ウイング車は、ウイングの構造と開き方によって、いくつかの種類に分類されます。それぞれの特徴と適している用途について解説します。
- ・天井固定型
- ・天井一体型上昇開閉タイプ
- ・フレキシブルタイプ
- ・ターンオーバータイプ
天井固定型
天井固定型とは、天井は動かずにサイドパネルだけが開くタイプのウイング車です。
サイドパネルを開いたときも高さが変わらないため、高さ制限のある場所での作業に向いています。サイドパネルが屋根の代わりになり、雨天でも作業がしやすい点もメリットです。
天井一体型上昇開閉タイプ
天井一体型上昇開閉タイプとは、荷台の天井の中心を支点とし、天井ごとサイドパネルが持ち上がるタイプのウイング車です。
天井とサイドパネルが一体になっているため、サイドパネルは天井よりも高い位置に持ち上がります。トラックの 開口が大きく、天井いっぱいまで荷物を積めるため、高さのある荷物を運びたい場合や、フォークリフトを使った荷物の積み下ろしに向いています。
ただし、屋根が低い場所での作業には向いていない点に注意が必要です。
フレキシブルタイプ
フレキシブルタイプのウイング車は、サイドパネルの開く方向や角度を柔軟に変えることができます。ウイングを垂直に開ける、サイドのみ全開にするなど、荷役作業をする場所に合わせて柔軟な選択が可能です。
ターンオーバータイプ
画像引用: 丸安株式会社
ターンオーバータイプのウイング車は、片側のウイングが中心線を大きく超えて開けられるタイプです。ウイングを折りたたんだり、ウイングを上げた状態で横にスライドしたりするタイプがあります。荷台の天井部分が開くので、クレーンを使った荷物の積み下ろしが可能です。フォークリフトが使えないような、大型の精密機械などを運搬するのに向いております。
ウイング車の動力
ウイング車のサイドパネルは重量があり、高さもあるため人力で開閉することはできません。そこで、サイドパネルは主に以下のような動力を使って開閉を行っています。
- ・油圧シリンダー+油圧パワーユニット
- ・ミニモーションパッケージ(MMP)
- ・コイルスプリング
- ・ガススプリング
それぞれの動力の特徴や、メリット・デメリットを解説していきます。
油圧シリンダー+油圧パワーユニット
油圧の力を利用して、サイドパネルを開閉する方法です。油圧パワーユニットで発生させた油圧を、サイドパネルに設置された油圧シリンダーに送ったり戻したりするすることで、油圧シリンダーが伸縮してウイングを開閉します。
油圧パワーユニットとは、モーター、油圧ポンプ、バルブ、リザーバーなどで構成される油圧システムのことです。高圧をかけられるため、油圧シリンダーから大きな力を発生させられます。そのため、重量のある大型ウイング車のサイドパネルでも、リモコンや操作パネルなどで簡単に開閉操作ができます。
しかし、製造コストやメンテナンスコストが高いというデメリットがあります。使用するたびに油圧シリンダーや油圧ホースなどに高圧がかかるため、劣化すると油圧漏れなどの不具合が起こることがあります。
ミニモーションパッケージ(MMP)
「ミニモーションパッケージ(MMP)」は、カヤバ株式会社が製造するモーター、油圧ポンプ、リザーバー、バルブ、油圧シリンダーなどを一体化した 油圧式リニアアクチュエータです。
MMPも「油圧シリンダー+油圧パワーユニット」のように油圧の力を利用する方法ですが、「油圧シリンダー+油圧パワーユニット」は、1つの油圧パワーユニットから前後の油圧シリンダーに配管をつないで油圧を送っています。
一方で、MMPは油圧ポンプや油圧シリンダーなどが一体化されているため、前後にそれぞれ独立したMMPを設置します。そのため、ウイング車を製造するにあたり、油圧配管の必要性が無く、設置する工数を減らせるというメリットがあります。
ただし、前後のミニモーションパッケージは独立している為に、ウイングの高頻度の使用で前後の同期が取れなくなってくるなどのデメリットがあります。
コイルスプリング
コイルスプリング式は、バネの弾性を利用してサイドパネルを開閉する方法です。油圧式に比べて構造がシンプルなため、製造コストが安価で、軽量というメリットがあります。また、油圧式と違い高頻度で使用しても油漏れや電気系などの故障リスクがありません。
しかし、油圧式よりは動力が弱いため、重いサイドパネルの開閉には対応していないことがあります。小型ウイングや幌ウイングのような、軽い車両に適しています。
ガススプリング
ガススプリングとは、気体を圧縮したときの反力を利用したバネのことで、この力を利用してサイドパネルの開閉を行います。ガススプリングは注射器のような構造をしており、チューブ状の本体にガスが密閉されており、ピストンで押し縮めることでガスを圧縮します。ガススプリングは、1本当たりのガス反力が小さいため、小型のウイング車に向いています。
ガススプリング式は油圧式に比べると構造がシンプルなため、製造コストが安価です。しかし、ガススプリングは消耗品であり、高頻度で使用するとガス漏れなどで反力が落ち、へたりなどの不具合が発生することがあります。
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【サイズ別】ウイング車の寸法
パブコ製のウイング車を参考に、ウイング車の荷台寸法を小型・中型・大型トラックに分けてご紹介します。実際の寸法は、トラックの仕様やメーカーによって若干の差があります。
小型ウイング車
小型ウイング車の荷台寸法は、以下の表のとおりです。
標準キャブ長尺車標準ボデー
内法高1,940mm
内法長 | 4,300mm |
内法幅 | 1,790mm |
アオリ高さ | 500mm |
中型ウイング車
中型ウイング車の荷台寸法は、以下の表のとおりです。
中型2軸車架装寸法例(リヤ標準開口仕様)
内法高2,315mmリヤ開口幅2,290mm
内法長 | 6,235mm |
内法幅 | 2,410mm |
サイド開口長 | 6,120mm |
リヤ開口高 | 2,215mm |
大型ウイング車
大型ウイング車の荷台寸法は、以下の表のとおりです。
大型4軸車架装寸法例(リヤ標準開口仕様)
内法高2,620mmリヤ開口幅2,280mm
内法長 | 9,590mm |
内法幅 | 2,390mm |
サイド開口長 | 9,465mm |
リヤ開口高 | 2,480mm |
ウイング車の代表的なメーカー
ウイング車を製造している代表的な架装メーカーについて、以下の6社をご紹介します。
- ・日本フルハーフ株式会社
- ・株式会社トランテックス
- ・株式会社パブコ
- ・日本トレクス株式会社
- ・株式会社メイダイ
- ・山田車体工業株式会社
日本フルハーフ株式会社
日本フルハーフ株式会社は、いすゞ自動車と資本関係にある架装メーカーです。箱型のボディの製造に特化しており、高い市場シェアを占めています。ウイング車のほかにも、アルミバン、トレーラ、冷凍車、特殊車両、海上コンテナ、鉄道コンテナ、航空コンテナ、プラントパッケージなど幅広く製造・販売を行っています。
日本フルハーフのウイング車には、大型冷凍ウイング、大型・中型の冷蔵ウイング、超軽量中型ウイングなどがあります。「スーパーリフト80」という上昇開閉タイプのウイング車も取り扱っています。
株式会社トランテックス
株式会社トランテックスは、日野自動車の100%出資子会社の架装メーカーです。ウイング車のほか、アルミバン、平ボディ(アルミブロック)、冷凍車、トレーラなどの製造を行っています。温度管理をするための冷蔵・冷凍車の種類が豊富です。
トランテックスのウイング車であるハイウイングシリーズには、ドライウイングに冷凍ウイング、冷蔵ウイングがそろっています。また、軽さに優れた手動式の幌ウイングの製造も行っています。
株式会社パブコ
株式会社パブコは、三菱ふそうトラック・バスの100%出資子会社の架装メーカーです。ウイング車をはじめ、アルミバン、平ボディなどの製造を行っています。
パブコのウイング車は、通常の波板状のサイドパネルを採用したタイプに加え、軽量なフラットパネルを採用した「エクシオウイング」というタイプもあります。
日本トレクス株式会社
日本トレクス株式会社は極東開発工業の連結子会社で、トレーラーの製造を得意とする架装メーカーです。ウイングトレーラ・バントレーラ・コンテナトレーラなどの各種トレーラ、並びにトラックボデー(ウイングボデー・バンボデー)、輸送コンテナ、シェルタ等、大型輸送機器の製造・販売を行っています。
日本トレクスのウイング車には、温度管理が可能なもののほか、ウイングにフラットパネルを使用したものや、後部からの積み下ろしが便利なテールゲート付仕様のウイング車もあります。
株式会社メイダイ
株式会社メイダイは、車輌事業と建設事業を展開している会社で、ウイング車や平ボディーなどのトラックの架装を行っています。
メイダイはスプリングを動力とした、手動式のワンタッチ幌というウイング車を製造しています。約50年、手動式のウイング車を製造しており、トレーラーから小型車まで幅広い車両に対応しています。
山田車体工業株式会社
山田車体工業では、冷凍ウイングやテールリフト付き、ルーフからチップフラップを投入できるタイプなど、さまざまな種類のウイング車を製造しています。ルーフが大きく開くターンオーバータイプのウイング車も複数の種類を扱っています。
山田車体工業ではウイング車の他にも平ボデーやバンボデー、スライドボデー、原木運搬車、家畜運搬車など多くの種類の架装を行っています。
ウイング車を取り扱う際の注意点
ウイング車は荷物の積み下ろしがしやすい反面、思わぬ事故につながるリスクもあります。ウイング車を取り扱う際に知っておくべき注意点について解説します。
積み下ろしをする場所を慎重に選ぶ
ウイング車は、荷役作業を行う際、側方や上部に十分なスペースが確保できる場所を選ぶ必要があります。サイドパネルが大きく開くため、周囲に接触してしまうおそれがあるためです。
路肩に停車する際は、電線や看板、木の枝などがないか注意しましょう。また、人通りのある場所では、人に接触しないように周囲の安全を確認しながら開閉操作を行います。
強風時は使用を控える
ウイング車のウイングは軽くて面積が大きいため強風に弱く、風にあおられて事故が発生する可能性があります。強風時は使用を控えたほうがよいでしょう。
ウイングが風にあおられると、ヒンジ部分が破損したり、突然閉まったりするかもしれません。車両ごと横転してしまい、大きな事故につながる危険性もあるため注意しましょう。
ウイング車によくある質問
ウイング車をより安全に、効果的に活用するために、ウイング車のメンテナンス方法と、バンボディとの比較を詳しく解説します。
ウイング車のメンテナンス方法は?
メンテナンスが必要な箇所を発見するために、まず動作確認を行います。ウイングの開閉操作を行い、全ての可動域においてスムーズに動いているか、異音が発生していないかなどをチェックしましょう。
次に、自然降下チェックを行います。ウイングを50cm上げ、10分後にウイングが自然に10cm以上降下していないかチェックする点検方法です。降下量が10cm以上の場合、なんらかの異常が発生していて、ウイングが開いている状態を適切に保持できていない可能性があります。
また、ウイングやアオリのロック機構に異常がないかもチェックしましょう。ロック機構に変形やサビなどの損傷がないか、操作がスムーズに行えるかなどを確認します。
ウイング車はバンボディに比べると、多くの開閉機構が備えられています。定期的に点検を行い、異常がある場合は、部品交換をするなど、適切なメンテナンスを行いながら使用しましょう。
同サイズのバンボディと最大積載量は同じ?
同サイズのバンボディと比較すると、ウイング車の最大積載量は少ない傾向にあります。ウイング部分を開閉するためのモーターや油圧装置等の開閉機構が搭載されることで、車両重量が増えるためです。
トラックの車両総重量は、車両重量・乗車定員・最大積載量の合計から求められます。ウイングの機構によって車両重量が増えると、その分の積載量を減らして車両総重量を調整する必要があるのです。
そのため、少しでも多くの荷物を輸送したい場合には、ウイング車よりもバンボディの方が適していることもあります。
まとめ
ウイング車とは、荷台のサイドパネルが鳥の翼のように大きく開くタイプのトラックのことです。ウイング車のなかでも、ウイングの構造や開き方が異なる車両があり、それぞれ適した場所で使用されています。また、ウイング車はバンボディよりも多くの開閉機構が備わっているため、適切なメンテナンスを行いながら使用する必要があります。
ヤマダボディーワークスでは、ウイング車に関する部品を多く取り扱っています。ウイングロックやウイング蝶番、セイコーラックなど、さまざまなパーツがあるので、ぜひご活用ください。