トラックの燃料タンクとは?役割や内部構造について解説
2024年2月19日
トラックの燃料タンクはシンプルな四角い箱に見えますが、安全かつ快適に使用できるよう、さまざまな工夫が施されています。
また、トラックの燃料タンクは事故発生時の安全性を高めるために基準改正(UN-R34)が行われており、認可年月日が2018年9月1日以降の新型車には、新基準の燃料タンクを装着しなければなりません。
本記事では、トラックの燃料タンクの基本的な役割や構造の解説、そして基準改正(UN-R34)によって燃料タンクにどのような変化があるのかを詳しくご紹介します。
ヤマダボディーワークスでは様々な燃料タンクの部品を取り扱っています。ぜひご活用ください。
目次
トラックの燃料タンクの特徴
トラックの燃料タンクは、乗用車のものと比較すると求められる性能が異なります。サイズや取り付け位置など、トラック特有の特徴を解説します。
トラックの燃料タンクの役割
トラックは、乗用車と比べると長時間走行することが多いため、容量の大きい燃料タンクが求められます。
乗用車の燃料タンクは軽自動車で約30リットル、普通車で約50リットル程度のものが多いですが、トラックの燃料タンクは100〜400リットルもの大きさがあります。さらに燃料タンクを増設して、2つ搭載しているトラックも存在します。
しかし、燃料タンクは大きくなるほど重くなってしまうため、トラック全体の重量も重くなります。燃料タンクが重くなると、その分の荷物の量を減らさないといけないため、燃料タンクは軽い素材で作られていることも求められます。
トラックの燃料タンクの取り付け位置
画像引用元:トラック大図鑑『燃料タンク』 | いすゞ自動車
トラックの燃料タンクは、シャーシの外側に固定され、隠れずにむき出しになっていることが一般的です。乗用車の燃料タンクは車体の下に隠れているため外側から見えないことが多いですが、トラックの場合は外から見てすぐに分かる位置に設置されています。
トラックの燃料タンクがむき出しで取り付けられている理由は、トラックの車体中央部分にはマフラーやプロペラシャフト、ディファレンシャルといった重要な装置が配置されており、燃料タンクを設置するスペースがないためです。
しかし、トラックは乗用車と比べると過酷な使われ方をする場合も多いため、燃料タンクは耐久性に優れていることが求められます。頑丈な金属性の燃料タンクが使われることが多く、簡単にサビが発生しないような工夫も施されています。
トラックの燃料タンクは固定方法にも特徴があり、タンク全体をバンドで巻いて固定していることが多いです。ボルトなどでシャーシに直接固定してしまうと、車体のねじれが燃料タンクに伝わってしまい破損する原因となるため、ねじれの力を吸収できるようになっています。
トラックの燃料タンクの内部構造
トラックの燃料タンクの外見はただの四角い箱のように見えますが、トラックがあらゆる状況で問題なく走行できるよう、様々な工夫が施されています。
タンク内の燃料はトラックの動きによって、前後左右に波打つように動きます。燃料が少ない状態でタンクの端に移動してしまうと、吸い込み口に燃料がなくなってしまい、吸い上げられなくなる可能性があります。
そこで、燃料タンク内部にはバッフルプレートという仕切りを設けており、燃料が少なくなっても吸い込み口に燃料が集まるような構造をしています。バッフルプレートを設ける以外にも、底がおわん型になっている燃料タンクもあります。
トラックの燃料タンクの基準改正(UN-R34)に関して押さえておきたいポイント
トラックの燃料タンクは車両火災防止協定規則により、燃料漏れ防止基準(UN-R34)という基準改正が施行されています。基準改正の対象車両には、改正前の燃料タンクやキャップの取り付けができません。
基準改正(UN-R34)の内容と、改正に至った背景を解説します。
改正点
トラックの燃料タンクに関する基準改正(UN-R34)によって、追加されている試験項目は以下のとおりです。
- ・タンク及びタンクに取り付けられている装置を装備した際の加圧試験
- ・金属製のタンクにも腐食性にかかる試験
- ・注入キャップの基準(従来の「通気式」から「密閉式」に)
- ・自動車転覆時燃料漏れ試験
安全性に関わる改正となっており、燃料タンクの耐久性やトラックが転覆した時の燃料漏れ防止に関することが主な内容です。
適用範囲
基準改正(UN-R34)が対象となる車両は以下のとおりです。
- ・液体を燃料とする自動車
- ・新型車:認可年月日が2018年9月1日以降の新型車
全てのトラックが対象となるわけではありませんが、対象となるトラックは改正後の燃料タンク及び燃料タンクキャップの取り付けが必要となります。
改正の背景
改正前のトラックの軽油燃料タンクは、トラックの追突事故や横転事故の際に燃料が漏れやすい構造となっており、最悪のケースでは人命が失われるような痛ましい事故に繋がることがありました。そこで、安全対策のために基準改正(UN-R34)が行われ、事故発生時にもタンクから燃料が漏れにくい構造に変更されています。
事故時に燃料が漏れやすくなっていた理由としては、従来品は燃料タンクとキャップに隙間があり、その隙間からタンク内で不足した空気を供給する仕組みになっていたためです。燃料タンクは走行によって消費した燃料の体積分の空気を供給しないと、タンクの内圧が下がってしまうため、タンクが潰れる原因となります。タンク内に必要な空気を供給するためには、メーカー純正品、若しくは適正な燃料タンクキャップを使用する必要がありました。
このことから、燃料タンクの構造を抜本的に見直す必要があるとされ、車両火災防止協定規則(燃料漏れ防止基準 UN-R34)が施行されました。
法改正に伴うトラックの燃料タンクの変更点と注意点
法改正によって、トラックの燃料タンクがどのように変更されたかを解説します。燃料タンクキャップの構造も変更されており、燃料タンクとの適合しないケースもあるため、交換する際の注意点も詳しく解説します。
燃料漏れ防止基準(UN-R34)適合のための改良ポイント
基準改正(UN-R34)では、トラックの横転事故を想定し、燃料タンクが回転しても燃料が漏れにくい構造へと改良されています。
燃料タンクの角度を何度倒した時にどの程度まで燃料が漏れても良いという車両火災防止協定規則(燃料漏れ防止基 準 UN-R34)の基準があり、それに準じた製品を各社は製造しています。燃料タンクが改良されている具体的なポイントは以下の通りです。
燃料タンクキャップの密閉化
従来の通気式のキャップを密閉式に変更することで、トラックの横転時にタンクが回転しても燃料が漏れにくくなっています。
通気バルブの取り付け
YSタンク株式会社の軽油用サブタンクの場合、燃料タンクキャップを密閉化すると燃料タンク内の圧力を調整できないため、通気バルブを設けることで空気の供給を行っています。
温度変化によって燃料タンク内の圧力が上がった際も、通気バルブで過剰圧の補正を行います。通気バルブもトラックの横転時に燃料が漏れにくい構造です。
給油口内へのフラップの取り付け
YSタンク株式会社の軽油用サブタンクの場合、給油口の内側にフラップを取り付けることで燃料の逆流を防ぎ、横転時に漏れづらくしています。燃料タンクキャップの取り付けを忘れていたり、誤って基準改正(UN-R34)非対応品のキャップが取り付けられていたりしても、フラップで燃料を止めることで漏れづらい構造です。
燃料キャップ装着時の注意点
燃料タンクキャップは法改正によって「通気式(改正前)」と「密閉式(改正後)」の2種類が存在しています。そのため、それぞれのトラックが基準改正(UN-R34)の対象車両かどうかに合わせて適切なキャップを選択する必要があります。
YSタンク株式会社の軽油用サブタンクの場合、改正後のR34規格の燃料タンクキャップが旧型の燃料タンクには付かない構造になっています。キャップの径は同じですが、キャップ内側の3本爪の1本を太くする事で旧型の燃料タンクには装着できないようになっています。反対に旧型のキャップは、新型のタンクに装着できてしまいます。誤って旧型のキャップを取り付けた場合、UN-R34の基準に非対応となってしまいます。
このように燃料タンクメーカーによっては、改正後の密閉式の燃料タンクキャップが、改正前の燃料タンクに装着できてしまう場合があります。装着してしまうと、破損の原因となりますのでご注意ください。
ヤマダボディーワークスで販売している燃料タンクキャップは、基準改正(UN-R34)対応の可否が商品名に明記しているので購入の際の参考にしてください。
トラックの燃料タンク:まとめ
トラックの燃料タンクは、使用環境が乗用車と比較すると過酷なため、安全に使用できるように様々な工夫が施されています。
トラックの燃料タンクは基準改正(UN-R34)により、事故発生時の燃料漏れの対策が行われています。トラックによっては改正前の旧型タンクが取り付けられなかったり、燃料タンクキャップがタンクに適合しなかったりすることがあるため、燃料タンク関連の部品の交換や増設を行う際は、トラックごとに適切な製品を選択する必要があります。基準改正前の車両には、新基準対応(UN-R34)対応の燃料タンクを取り付けることが可能です。
ヤマダボディーワークスでは、構造変更を行え自社で取り付け出来る整備工場様・架装工場様へは、燃料タンク本体の販売も行っています。また、「YSタンク株式会社」の燃料タンクの一部機種は、タンク内部の補強板の位置変更などにより旧型から新型(R34対応品)へそのまま載せ替えが出来ないケースがあり、ステーの位置変更が必要な場合があります。
ご希望の場合は問い合わせフォーム、またはお電話(054-261-7748)にてお問い合わせください。