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2トン以上のトラックも昇降設備設置義務化の対象に|法改正のポイントを解説

2023年10月31日

労働安全衛生規則が改正され、令和5年10月からトラックの昇降設備の設置義務の対象となる範囲が拡大されました。これまで設置義務がなかった車両でも、今後は必須となるケースがあります。

違反すると罰則の対象となる場合もあるため、荷役作業を行うドライバーや業者は、改正の内容を把握しておきましょう。

こちらでは、昇降装置の設置義務化に関する概要や、具体的な対策について解説します。

トラックの昇降設備の設置義務化の概要

まずは、2023年10月の法改正による、トラックの昇降設備の設置義務化の概要を見ていきましょう。設置が必要なトラックの種類や、法改正に至った背景、違反時の罰則などについて解説しますので、トラックの荷役作業を行う方はぜひ参考にしてください。

設置義務の範囲が「2トン以上」に拡大

これまでも最大積載量が5トン以上の貨物自動車には昇降設備の設置が義務付けられていましたが、法改正によって最大積載量2トン以上5トン未満の貨物自動車も設置義務の対象となりました。

2トン未満のトラックは以前から昇降設備の設置義務はなく、今回の法改正でも義務付けられていません。しかし、小さなトラックでも事故発生の可能性があるため、昇降設備があったほうが望ましいとされています。

ただし、2トン未満のトラックであっても1.5mを超える箇所で作業をする場合は、昇降設備を設置する必要があります。

出典:トラックでの荷役作業時における安全対策強化|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

義務化の施行はいつから?

2トン以上の貨物自動車は、令和5年10月から昇降設備の設置義務化が始まっています。貨物自動車の最大積載量と昇降設備の関係は以下のとおりです。

最大積載量 2トン未満 2トン以上5トン未満 5トン以上
昇降設備の
設置義務
設置義務はない 2令和5年10月から
義務化
以前から設置義務
有り

法改正後も2トン未満の貨物自動車には昇降設備の設置義務はありませんが、安全作業のために設置が望ましいとされています。

法改正に至った背景

昇降設備の設置義務に関する法改正に至った背景には、労働災害の中でも、荷役作業中の事故が占める割合が多いことがあります。トラック運送事業における労働災害は、荷役作業中に発生している事故が約7割です。荷役災害の中でも、荷台からの転落や昇降時の事故やアオリに立って作業をしている事故などが4割を占めています。

また、死傷災害の原因として最も多いのが、墜落転落災害です。墜落転落災害による死亡災害のうち5トン以上のトラックからの災害が5割を占めていますが、2トン以上5トン未満のトラックからの災害も4割を占めています

これらから2トン以上5トン未満のトラックで発生している事故の割合が、5トン以上のトラックと大差がないことが分かります。そこで、昇降設備の必要性が見直され、設置義務対象車両の範囲が拡大されました。

ダンプにも昇降設備は必要か?

ダンプにおいても昇降設備の設置義務は例外ではないため、今後は最大積載量が2トン以上の車両には設置しないといけません。昇降設備の設置義務に関する規定は、貨物自動車の最大積載量と荷役作業を行う高さによって定められているため、貨物自動車の荷台の形状や種類に関わらず基準を超える車両には昇降設備の設置が必要です。

また貨物自動車とは、専ら荷を運搬する構造の自動車と定義され、ダンプトラックも含まれます。

出典:【車両系荷役運搬機械等 総則】貨物自動車の定義|厚生労働省・審議会・研究会等

設置義務に違反した場合の罰則

昇降設備の設置が義務付けられているトラックで、昇降設備を備えずに作業を行った場合は罰則の対象となります。労働安全衛生法により、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられます。

違反を指摘されてもすぐに罰則の対象になることは少なく、はじめは行政指導が入ることが多いでしょう。ただし、業務形態が悪質だったり、繰り返し指導を受けても改善が見られなかったりする場合は罰則を受けることがあります。

不要な指導や罰則を受けないためにも、昇降設備が義務付けられているトラックの範囲や、どのような昇降設備が必要なのかを把握しましょう。

トラックにはどのような昇降設備を設置したらよいのか?

トラックの昇降設備には、シンプルな足かけや梯子など様々な種類があります。設置義務の対象のトラックに、どのような昇降設備を備えたらよいのか解説します。

昇降を安全に行えるステップやグリップを用意しよう

厚生労働省の規定では、次のように事故防止のために安全な昇降装置が必要だとしています。

「昇降設備」には、踏み台等の可搬式のもののほか、貨物自動車に設置されている昇降用のステップ等が含まれます。なお、昇降用ステップは、できるだけ乗降グリップ等による三点支持等により安全に昇降できる形式のものとするようにしてください。

なお、昇降用ステップは、できるだけ乗降グリップ等による三点支持等により安全に昇降できる形式のものとするようにしてください。

引用:トラックでの荷役作業時における安全対策強化|厚生労働省

では、「安全な昇降装置」とはどのようなものでしょうか。厚生労働省(岡山労働局)の資料では、次の要件を備えた設備であるとしています。

  • ・地面から踏面(2段以上の場合は段差ごと)の段差が50cm以内であること
  • ・両足を置くことができる踏面幅であること
  • ・踏面表面上に滑り止め加工がされていること
  • ・踏面は板状またはスリット状であること
    (角柱状や棒状の場合は、三点支持による昇降ができる昇降グリップが必要)
  • ・車両取付型の場合は、リア、サイド、あおりなど車体側面から突出して1か所以上設置されていること
  • ・地面から荷台までの間に、荷台から見て足裏の半分以上の長さが視認できる踏面が1段以上設置されていること

引用:貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則等の一部改正のポイント|厚生労働省

なお、トラックに元から備えられている巻き込み防止装置やバンパーは、足をかけるための奥行きが十分ではないため、昇降設備として認められない場合があります。

安全に昇降できる昇降設備の例

トラックに備えられる昇降設備には、「トラックに備えられているステップ」「移動可能な踏み台」「テールゲートリフター」などがあります。それぞれの昇降設備の特徴や、使い方などを解説します。

トラックに備えられているステップ

トラックに備えられているステップとは、トラックにリベットやボルトで固定されて外すことができないタイプのステップです。格納式のステップやはしごのようなタイプなど様々な種類があります。

トラックの昇降部にあらかじめ設置されているため、単体で持ち運んだり固定したりといった手間がありません。ステップの設置位置が変わらないため、近くにグリップを設置することで安全に荷台への移動ができます。

移動可能な踏み台など

脚立のような移動可能な踏み台も昇降装置として認められます。汎用性があり、トラックへの取り付けが不要といった点がメリットです。

手軽に用意できる一方で、作業を行う度に設置や片付けをする手間があったり、トラックに積み込んでおいたりする必要があります。頻繁に作業を行う場合には、作業効率の低下を招く恐れがあります。

テールゲートリフター

テールゲートリフターを備えているトラックは、中間位置で停止させてステップとして使用してもよいとされています。テールゲートリフターとは、トラック荷台の後部に備えられている、荷物の昇降用リフトのことです。ただし、原則として人が乗った状態でテールゲートリフターを昇降させてはいけません。

トラックの昇降設備の設置義務化に際しておすすめの昇降設備は?

ヤマダボディーワークスで扱っている、おすすめの昇降設備を紹介します。安全に使えるだけでなく、作業効率が下がらない使い勝手のよい昇降設備もあるので、ぜひ参考にしてください。

ステンレス アオリ足掛 埋め込み式

ステンレスアオリ足掛

アルミブロックの内側に埋め込むタイプのステップで、アオリを開いた状態で荷台に昇降する際に使います。ステップを使用しない時はアオリ内に格納するように閉じることが可能なため、ほとんど突起が発生しません。アオリに設置する際は、アルミアオリを所定の寸法で切り欠き、Φ6.4mmのモノボルトクラスの強力なリベットで6箇所固定するため高い強度を持たせることができます。

使用していない時の置き場としてのスペースを取らないだけでなく、使用時はステップを開くだけなので誰でも簡単に操作ができる点もメリットです。ステンレス製のためサビに強く、耐久性が高いといった特徴もあります。

ただし埋め込み式の為アルミブロックのアオリにしか設置できません。また設置の際に、アオリに加工が必要ですのでご注意ください。


ステンレス アオリ足掛 埋め込み式

3,850円

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アオリステップ ラッシングレール用 AS-TR

アオリステップ ラッシングレール用 AS-TR
ラッシングレールに取り付けるタイプのステップです。
折り畳みが可能で、収納時の出幅も約50mmとコンパクト。そのため未使用時でも取り付けたままにできるのが、この商品の大きなメリットです。

またステップにバーリング加工が施されており、滑りにくい構造になっているため、雨や雪の日も安心。
使用していない時の置き場としてのスペースを取らない便利なアイテムです。


アオリステップ ラッシングレール用 AS-TR

14,080円

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ラッシングステップ バーリングタイプ

ラッシングステップ

アオリが開いた状態で、アオリの内側のラッシングレールに引っかけて使用するステップです。2箇所のワンピース金具をラッシングレールに固定することで、足を掛けても問題のない強度のステップを簡単に設置できます。梯子のような大きな部品ではないため、使用しない時は運転台の助手席の足元に置いておくことが可能です。

ラッシングレールが付いているアオリであれば、トラックに無加工(リベット止めなどが不要)で設置できるため、整備工場などに入庫して設置してもらう必要がありません。商品を購入するだけで、すぐに使えるという手軽さが特徴です。

こちらの商品は、ラッシングレールが付いたアオリにしか設置できませんが、下記の商品を使用すれば、ラッシングレールのついていないアオリにもラッシングステップを取り付けることができます。

>ラッシングレール L=350mm(穴付) グレー ラッシングステップ用
>ステンレスラッシングレール L=350mm(穴付) NSSC180 ラッシングステップ用


ラッシングステップ バーリングタイプ

8,800円

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鉄製 スライド3段ステップ のぼるくん

スライド3段ステップ鉄製のぼるくん

バンやウイング車の荷台に設置するタイプのステップで、スライド式になっているため未使用時には床下に格納できます。六角ボルトか溶接での固定が必要なため、トラックへの加工が必要です。一般的にはリヤの観音扉の下に埋め込んで設置しますが、200mm程度の低いアオリであれば、側面の荷台下にも設置が可能です。

「のぼるくん」シリーズは階段式になっており、他の昇降装置と比較して使用性がよく、安全性が高いのが特徴です。
のぼるくんの解説

ステップの表面には滑りづらいように凹凸加工が施されているほか、格納時の飛び出しを防ぐストッパーが付いているため安心して使用できます。素材が鉄製のため、後に紹介するステンレス製の製品と比較すると安価です。


鉄製 スライド3段ステップ のぼるくん

28,380円

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ステンレス スライド3段ステップ のぼるくん

ステンレスのぼるくん

上記の「鉄製 スライド3段ステップ のぼるくん」と同じ特徴を持った製品ですが、素材にステンレスが使われています。サビに強いため、積雪地で融雪剤を撒く地域や沿岸を走行するトラックにおすすめです。


ステンレス スライド3段ステップ のぼるくん

60,610円

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※ここからは、3点支持により昇降を補助する製品を紹介します。

アシストベルト L=200mm AST-RG-I-200

アシストベルト

アシストベルトは、リング状の部分を手でつかんで昇降を補助するための製品です。荷台への昇降は三点支持が推奨されており、安全に昇降するためにはステップだけでなく取手(グリップ)となる製品が必要です。
アシストベルトの解説

先端のワンピース金具をラッシングレールに付けて使用するタイプの製品で、一般的にリヤの観音扉の内側に設置された門口用のラッシングレールに使用します。ラッシングレールには端尺の製品があるため、アシストベルトを使用する際に便利です。

また問口用のラッシングステップ用より更に短いラッシングレールもありますので、用途に合わせてお選びください。

>ラッシングレール L=200mm(穴付き)門口用
>ステンレスラッシングレール L=200mm(穴付き)SUS304 門口用


アシストベルト L=200mm AST-RG-I-200

1,980円

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ステンレス取手 L=194

ステンレス取手

ステンレス取手は一般的に荷台後部の観音扉の脇や、サイドアオリの脇に設置して使用します。ステップとあわせてステンレス取手を設置することで、安全な昇降が行えます

トラックに固定するための加工が必要ですが、ボルト2本で設置できるため比較的簡単に加工が可能です。ステンレスの製品のため、サビに強く耐久性が高い特徴があります。


ステンレス取手 L=194

2,530円

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アルミ取手 L=245

アルミ取手

「アルミ取手 L=245」は、荷台後部の観音扉の脇や、サイドアオリの脇に設置して使用する取手です。全体の長さが245mmの製品です。

トラックに固定するための加工が必要です。素材がアルミのためサビに強く、ステンレスの製品と比較すると安価です。


アルミ取手 L=245

1,705円

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アルミ取手 L=360

アルミ取手

「アルミ取手 L=360」も荷台後部の観音扉の脇や、サイドアオリの脇に設置して使用する取手です。全体の長さが360mmの製品です。


アルミ取手 L=360

1,980円

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トラックの昇降設備の義務化:まとめ

法改正により、最大積載量が2トン以上のトラックには、昇降設備の設置が義務付けられました。設置する昇降装置は、安全に昇降ができ、使い勝手のよい製品を選ぶのがおすすめです。

ヤマダボディーワークスでは、様々な走行装置に関する製品を取り扱っています。ステップだけでなく、三点支持に必要なグリップの販売も行っています。多くの種類のトラックに対応しますので、ぜひご活用ください。